「嫌い」
酔っていたとしか言い様がない。
月見酒に興じていたら良守が帰ってきた。
俺に一瞥だけくれてその場を立ち去ろうとしたので呼び止めたら嫌な顔をされた。
それにむぅっとしてしまって、そんな風になってしまった時点で酔ったのだと気付けば良かったのだけれど。
「おまえ、そんなに俺のこと嫌い?」
と訊いたら、
「嫌い」
と返された。
訊いたのは自分だけれど、いつものことなのだけれどやっぱり酔っていた所為で俺の感情の制御が緩くなっていて。
念糸で疲れていただろう良守を捕まえて、引きずるようにたぐり寄せて、それにのし掛かった。
それから念糸を解かないまま、思う存分というほどキスをした。
実弟だとかまだ中学生だとか、そんなことは思わず、喉の奥にまで舌を突っ込んで良守の味を堪能してから唇を離し。
「俺も、嫌い」
選りに選ってそんな言葉を投げつけた。
きっと「離せ」とか「キモイ」とか喚かれるだろうとしか思わなかった。
けれど。
良守は傷ついた目をして、ぼろぼろと雫を流して。
その後直ぐ、腕で覆い隠して。
「知ってるっ…」
と呟いた。
酔ってたんだ。
ちょっとつれない良守に腹が立っただけなんだ。
悪ふざけのつもりだったんだ。
そんな言葉は俺の口から出てくれなかった。
ただ、良守が俺を嫌いと言っていた理由が分かった気がして途方に暮れた。
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こういう兄貴が好きです。兄貴にひどいこと言われて耐えたかったよっちですが流石に無理で、そんなよっちに愛しくなる兄貴。この路線で行こうかな。でもよっちがかわいそうだからいいや。悪ふざけでキスはかわいそすぎる…。
2007/08/15
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