水中花




兄貴の空間の中では俺は異物だ。
それはウロ様の空間と少し似ているのだけれど、自分を見失う程ではない。
だけれど、この空間では異物なのだという違和感はそのまま気持ち悪さとなり、体に力が入ない。 結果、兄貴の膝の上でなすがままになってしまう。
与えられる快感に耐えることも、それを逃すことも出来ず体中に巡り巡って、飽和状態になる。

「け、せよっそれ…っ」
「結界のこと?消したらみんなに聞こえるよ」
「それじゃなくてっこれ、いや、だ!」

力の入らない手で兄貴の着物を掴みながら必死で言うと苦笑される。
わかってるクセに、狡い。卑怯だ。
兄貴が分からないはずがないのに。

「でも、なんかいつもより気持ちよさそうだけど?」
「っ……」

あんまりな言葉に、一瞬喚きそうになるが、尻の間をなぞられて息を呑む。
ヒドい奴だ。
確かにいつもより声は出てる…のは認めるけど。
それは気持ちいいからじゃなくて、自分の存在が揺らぐあの空間に似た兄貴の空間が耐えようもないくらい気持ちが悪いからだ。
わかってるんだ。どうせ、そんなこと。

「それにさ、黒姫も見たいって」
「ば、バッ、カ兄貴っ!」

叫ぶと、ず、と兄貴の指が侵入してきて身体が強ばる。
思わず腰を浮かせてしまうと、片方の手で抱き寄せられて膝立ちになった。
勃った俺のそれは兄貴の腹の上部の固い所に擦れて、呻き声が出てしまう。

「大丈夫、黒姫は俺だから。俺が見てるって思いなよ」
「おもえる、か!」

兄貴が二人いるだなんて考えるだけで鳥肌ものだ。
そう言いたいのだけれど、中を掻き回す指に言葉を出すのが難しくなる。
力が抜けてしまいそうだったから、兄貴の首に抱きついて崩れ落ちるのを防いだ。
兄貴の笑う声が聞こえたけれど、それに構う余裕がない。
どんだけ漏れる声を我慢しようとしても、唇に力が入らない。
俺はこんなに必死なのに、兄貴は楽しそうに人の中をぐちゃぐちゃにする。
ムカツク。
どこにいるのかわからないのに、俺の姿を見ているらしい黒姫にも、兄貴にも腹が立つ。

「ば、バカ、あにきの、バカっ…も、きらい、だ」

すごく腹が立って、鼻の奥が痛くなって兄貴の頭を抱えながらスン、と鼻を鳴らす。
泣いている訳じゃないけれど、兄貴はそう思ったのかも知れない。
苦笑した声で、酷いなぁと言う。
酷いのはお前だってのに。

「良守に嫌われたくないからね。いいよ、消したげる」

兄貴が言うと同時に、すーっと気持ち悪さが引いていって力が抜けた。
かくん、となった身体を兄貴の手が支える。
荒い息で落ち着くのを待っていると、じゃあ、と兄貴が言った。

「え、あ、あっ」

指が急に抜かれて、代わりにもっと太くて熱いモノが宛がわれる。
慌てても遅くて、それは簡単に俺の中に入ってきた。
十分に時間を掛けてほぐされたせいか、抵抗などなかった。

「あ、ぁあ、」

腰をぐい、と押されて最後まで入れられる。
尻にちくちくと当たる感触がいつも嫌だと思うのだけど、いつもすぐに分からなくなる。
今回もすぐに腰を揺らされて、あっという間に分からなくなった。

気持ち悪さなどとっくに消えたのに、声が我慢できなくて。
しがみつく腕も力をなくしてただ、着物を掴むだけになる。
兄貴、と何度も呼ぶと顎を掴まれてキスされた。
夢中で兄貴の舌を吸っていると、剥き出しのそれを掴まれて思わず身体が沿った。

「あ、あにきっ」
「なに?」
「も、駄目っ!」

中を突かれるだけでも耐えられないのに、兄貴の手で擦られるともう訳が分からなくなる。
だから限界を訴えたのに、ぎゅっと握られる。

「やっ」
「イク?」
「や、手ぇ、はなせよっ」
「駄目」
「あにきっ!」

握ってせき止めてるクセに、先っぽをぐりぐりするし、後ろは乱暴なくらい突き上げてくる。
苦しくて辛くて涙がボロボロ出ると、それを舐められて身体のふるえが激しくなった。

「っあに、き!たのむから…っ」
「俺のこと好き?」
「な、に?」
「好きって言ったらイかせてあげる」
「っ…」

どうやらさっき嫌いと言ったことを根に持っているらしい。
きっと睨むけれど、手を放して貰えない。
好き、なんて。
こんなときに言えるか。
そう思って兄貴の額の傷跡を舐めた。
俺はこの傷跡が結構好きで、多分兄貴もそれを知っている。
汗の味に興奮しかけていると急に後頭部を掴まれ、引き離されると兄貴にキスをされた。そのまま頭を固定され、俺を掴んでいた手が俺の腰に回され、思いっきり突き上げられた。

「んーっ」

口を離すことが出来ず、呼吸ができずに苦しんでいる中を何度も乱暴に揺らされ我慢できなくなってイってしまったあと、兄貴も俺の中でイった。
漸く離れた兄貴の顔は、少し苦笑気味だった。

「ずるいね、良守は」

どっちが、と言いたかったけれど、そんな気力はとうに失せて。
解放の余韻に浸っていると意識が遠のいていくのを感じた。
このまま眠りたいな、と思って目を閉じるとどこからか、ちゃぷん、と聞こえた気がしたけれど確認する前に俺の意識は飛んだ。













--------------------------------------------------------------
黒姫が書きたくてでも黒姫がよくわかんなかったので(どういう存在か)、取り敢えず自分で漫画を読んで勝手に解釈しました。
ってことで黒姫はきっと兄貴の作り出した空間の中でしか生きられなくて、兄貴が創り出した空間のなかで兄貴と自分(←黒姫も兄貴の一部)以外の「異物」を発見することが出来るってことで。便利ですね。
あと、何が出来るんだろ、なあ。
で、兄貴の一部って事はきっと変態でよっち好きなんだろうなと。姫だけど、内心は雄ってことで、だって兄貴だもの。兄貴のことは普通に主人としか思ってないとか。若しくはよっちに出会ってよっちに惚れたとか。

で、なんで黒姫を書こうとしたら単にエロくなったかって言うと。
なんででしょう。なんか書きたいなって。でも、もっと黒姫を絡めれば良かった……。
よっちのあれちゅっちゅする黒姫とか。むしろ、黒姫をけしかける兄貴とか。んで黒姫で感じちゃうよっちとか。
今度チャレンジしてみます。
ちなみに、両思いの二人です、多分。
2007/09/19

閉じる