口説かれたい









兄貴がよく帰ってくるようになっていた。
父さんもジジィも利守も喜んでいたし、内心、俺だって嬉しかった。
説教だったり嫌味だったり言われるのはむかつくけど、俺だって嬉しいって思ったんだ。
だって、兄貴だもん。俺の、兄貴だもん。







仕事が終わって家に戻ると、縁側で兄貴が寝ていた。
少し考えてから庭から兄貴に近付いて様子を見る。
側には徳利が転がっていて、ああ、酒飲んだのかと思う。

「兄貴、兄貴」
「んー…」
「縁側なんかで寝るなよ。自分の部屋に戻れって」
「よし、もり?」

目を開けた兄貴にほっとして、玄関に向かおうとすると着物を掴まれる。

「兄貴?」

兄貴は着物を掴んだまま、少しぼーっとした表情だった。
寝ぼけてるのかな、と思いその手を外そうとしたけれど外れない。

「兄貴、離せって」
「仕事、終わったんだ」
「終わったからいるんだって。そんなこといいから早く部屋に戻れよ、風邪引くだろ」
「うん」

頷きながらも俺の着物から手を放さない兄貴に溜め息を吐いて、靴を脱ぎ、縁側から室内に入った。
兄貴の身体の下に手を入れて、起こそうとするが、重くて中々動かない。

「兄貴、起きろってば」
「うん、良守が連れてってくれるなら」
「背負ってってことか?」
「ううん、手を引いて連れていってよ」

なんか兄貴が子どもっぽくてちょっと可愛くて、嬉しくなる。
こんな兄貴知らない。寝ぼけてるなら、これがホントの兄貴かも知れない。
こうやって、俺に接してくれるのが、少し嬉しかった。
そう思って手に力を入れて起こそうとした。

「いいよ。連れていってやるからさ、起きろよ」
「ホント?」
「ホントだから動けって、え?」

兄貴が起きあがりかけたと思ったら俺の方に倒れてきた。
事態が飲み込めず、兄貴の下敷きになってぽかんとする。
寝てんのか?

「兄貴、重いからどけろ」
「優しいなぁ良守」
「は?」
「かわいー、良守」

意味不明なことを言われたかと思うと両手で頬を挟まれた。
兄貴はにへら、とだらしない笑みを浮かべて。
そんな顔、見たことないなぁって思っていたらキスされる。
それは軽く触れるだけで、俺はやっぱり事態が飲み込めずぽかんとした。
そうしたら兄貴は、親指で俺の頬をこしこし、と擦った。

「良守って柔らかいね。ホントのもそうなのかな」
「ホントの、って」
「かわい」

何を言っているのか全くわからず、兎に角兄貴が重いから手を突っぱねてどけようとする。
だけど、兄貴は全く意に介せずという感じでまたキスをしてきた。
今度は唇を舐められて、思わず顔を背けようとしたけれど兄貴の両手で固定されているので叶わない。
簡単に口の中に侵入されて、舌を舌で引っ張られる。
酒臭さに吐き気がした。

「んーっんーっ」

やめて欲しくて首を振っても僅かにしか動かない。
兄貴の舌が俺の口の中をグチャグチャになりそうなほど舐め倒して、俺がもう何も考えられなくなった頃、解放された。
唾液が赤ん坊みたいに顎から首筋まで流れているのが気持ち悪いと思っているとそれを拭われる。

「かわいい」

かわいいって、なんだ。なんなんだ、この兄貴は本物か?
あ、酔ってんのか。そうか。誰かと勘違いしてるのか。
いや、俺の名前を呼んだぞ。一体なんなんだ。
ぐるぐると思考にはまって混乱していると、兄貴がクスクス笑い出した。

「あに、き?」
「良守。良守。大好きだよ」

言われた言葉に、かーっと頬が熱くなる。好きって、兄貴が?俺を好きって。
なんで、好きって。嬉しい。兄貴が、俺を好き?
見上げると兄貴はにっこりと俺に笑いかけた。

「あにき、」
「かわいいね、良守」

そんなこと子どもの頃にも言われたことがなくて、おかしいだろって思うんだけどそれより嬉しくて。
酔っぱらっているんだったら本音だ、きっと。
兄貴はおれを嫌ってないんだ、そう思ったらどうしようもなくて。

もう一度キスされても抵抗する気になれなくて、なすがままになっていた。
すると、着物の中に手を入れられ、着物がはだけられる。
え、あにき、と思っても口を塞がれてるので何も言えない。
どんどん、と兄貴の胸元を叩くが、無視される。
帯を解かれ、袴を取られ、ようやっと口が離される頃には裸になっていた。

「ふぁ、ちょ、あにき、やめ」

これは流石にヤバイだろ、と思うんだけど。
兄貴は止まってくれない。
首筋を舐められて噛まれて、背中がぞくそくしていたら、色んな処を撫でられて舐められて噛まれた。
気付いたら俺の足の間に兄貴の頭があって、俺のそれをちゅーちゅーと音が立ちそうな程吸っていた。
もう俺は声なんか我慢できなくて、でもこんなところ父さんとかジジィとか利守に見つかったらヤバイって言うのだけは頭にあって、酔っぱらった兄貴なんてアテに出来ないと一生懸命結界を張って保っていた。
それに気を遣っていたせいで、抵抗なんてできなくて。
けれど、イッた瞬間結界が溶けるように崩れた。
これで兄貴が終わってくれたら良いんだけど、と思ったけど兄貴は今度自分の帯を解いていた。
ヤバ。

「兄貴、も、やめてくれって」
「やだ」
「やだって、ちょ、なんでテメェ、おっ勃っててんだよっ」

別に俺が触ったわけでもないのに、え、と思っていると兄貴はぽかんとする。

「だって、良守に欲情したから」
「は?」
「好きだもん。欲情くらいするっしょ」

え、ええ、と思っていると身体がひっくり返る。
ぐい、と尻を開かれて、生暖かい感触に身体が跳ねた。
一瞬遅れて頭が理解する。ケツの穴を舐められた。

「や、兄貴っそこ、やめっ」
「やだ」
「やだじゃねぇーっ汚いだろっ」
「汚くないよ」

いや、汚いだろ、と言う前に穴に舌が侵入してきて言葉が出なくなる。
そんなところを舐められたことがあるわけがなく、気持ちが悪い感触に逃れようとすると腰に手を回され動けなくなった。

「やだ、あにき、も」

喚いていると、俺のそれを握ってきて擦られる。
いつのまにかもう片方の手が腰から離れ、舌と一緒に指が入ってきた。
ぐりぐりと掻き回され、吐き気がする。
前は一応気持ちいいんだけど後ろは気持ち悪いし、嫌だと繰り返す。
逃げようとしたら、ぐい、と腰を引かれ、兄貴に腰を突き出す形になった。
そしてそこに何か固いものがぐいぐいと、押し付けられる。

「え…?」

ふり返ると兄貴のでっかいのが(それもさっきよりでかくなって)、俺のそこに押し付けられていた。
そんなの入るわけない、っていうかそんなの入れられたら…叫ぶ。絶対叫ぶ。
もう多分兄貴を俺には止めることは出来ない。
ここは叫んで父さんかジジィを呼ぶべきか。なんて考えてたらメリ、と先端が入ってきた。

「…っい、」

それだけで死ぬ程痛い。痛いけど叫んで誰かが来たらやっぱりこれを見られるわけで。
そら、入れられた方がマシな気がする。嫌だけど、俺と兄貴の名誉の為…。
俺じゃきっと結界を張っても保ちきれない。

「あ、あにき、け、っかい、けっかい、張ってっ」
「ん、結界?」
「結界!こえ、聞こえるっ」
「ああ、うん」

結、と兄貴が呟くと印も結んでないのに俺と兄貴を囲む結界が張られる。
それで一安心、と思って力を抜いたせいか。
ずずっと兄貴が一気に入ってきた。

「い、い、いっっっってぇぇぇぇぇぇっっっ」
「痛い?ごめんね」

そう言いながら兄貴は俺の前をさすったり、背中にキスをしたりした。
身体が裂けそうな程痛くて痛くてたまらないんだけど、背中にキスをされるのが気持ちいい。
なんでだ、よくわからない。
けど、そのおかげで少しずつ力が抜ける。
俺の中に入っている兄貴もそれが分かったのか少しずつ動き始めた。
まるで内臓を引っ張られているようで、恐い。
けれど、兄貴が擦ったある箇所に身体がびくん、と反応する。

「う、あ…?」

思わず背後の兄貴を見ると、

「今のトコ、好かったの?」
「え…?」

嬉しそうに笑った兄貴はそこを中心についてきた。すると痛みももちろんあるんだけど、むずむずとした何かが這い上がってきた。
出る声は呻きから高い喘ぎのようになって、俺は一体どうしたんだと思うんだけど思うだけでそれ以上の思考に辿り着かない。

「良守、気持ちいい?」
「ぁ、やぁっあにき、へんっ」
「気持ちいいんだ。かわいい。好きだよ、もっとヨがって」

兄貴が一際大きくついてきた直後、俺の中に熱いモノが。
凄く熱くて火傷しそうだと思っていると、兄貴が手の中の俺の先端を爪で引っ掻いて、俺も熱を吐き出した。

はあ、はあ、と息を荒くしていると繋がったままひっくり返される。
擦れる痛みに眉を顰めると、ぐいと大きく足を開かされて兄貴が俺に乗り掛かってくる。
足を抱えられ、キスをされた。

「ん、あにき、もやめ…」
「やだ。もっと良守の中でイかせて?」

いい、なんて言わないのに兄貴はまた動き出す。
結局それから何度かされてしまって、最後に俺は気を失ってしまった。



苦しくて目が覚めると兄貴が俺に乗っかったまま寝ていた。
それも、中に入ったまま。
慌てて周りを見回すとまだ、夜明け前で兄貴の結界はもうなくて。
誰も他にいないから、取り敢えず安心して兄貴を起こした。

起こすと兄貴は寝ぼけていて、状況を把握していない所か俺をヤッたのを夢だと思っていたらしい。
目が覚めた瞬間兄貴は青ざめて少し面白かった。
兄貴は慌てて俺の中から出ていって、土下座してびっくりした。
びっくりしたのだけれど、それより気持ちが悪いから風呂に運ばせて、したら兄貴が俺の中にまた指を突っ込んで中のものを出されてはずかしくてしかたがなかった。

俺の部屋に運ばれて、濡れた髪の毛をぐいぐいと拭かれる。
こんなの子どもの時以来で気持ちよさに目を瞑っていたらゴメンとまた謝られた。
何度も謝れると、困る。
だから謝るなって言ったら兄貴が変な顔をした。
俺もどう言えばいいのかわからなくて困る。
ただ、謝られたいんじゃないんだ。

だから、口説けと言った。どれくらい兄貴が俺のことを好きなのか知りたかったのだ。
そしたらホントに兄貴が口説いてきた。
俺はうれしかった。言ってることはあまり理解できなかったのだけれど、兄貴は俺を好きなんだって。
酔ったから、勢いで言ったんじゃなくて。
兄貴はホントに俺が好き。
ケツは痛いけど、それも兄貴が俺のことを好きだからと分かると嬉しい痛みになった。
口説かれてやると言ったら兄貴は慌てて。
それでも抱きしめてきて、温かくて子どもの時以来だなって思ったら眠くなった。
兄貴に抱きついて眠ったから、朝起きて兄貴がいなくて夢だったのかと思う。
しかし、俺の周りにあった結界が兄貴のもので。ケツも痛かったし。
ああ、夢じゃない。
嬉しさがまた、俺を満たした。
そのまま、俺は隣の部屋へと兄貴を起こしに行く。

「起きろ兄貴ぃ!朝だぞ!」

もう、兄貴に嫌われていると兄貴を避けなくて良いことが、とても嬉しかった。





















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よっちは兄貴が好き。なんですが、恋慕よりはブラコン。
兄貴が好いてくれてるなら足も開ける過激なブラコン。こういうよっちが好きかも…。

最後の編がなんかたたーっとなったので、これもまた書き直します。ちょい眠いので…。
あと、タイトルは(仮)です。思いつかなくて…。後で直します。

2007/09/26


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