「もイヤになっちゃう」
利守は夜中にぱちりと目を覚ました。
子どもだからか、結界師としての仕事をしないからか、利守は夜中に熟睡できる墨村家の数少ない住人である。
なのに起きてしまった利守は寝起きなのにはっきりと不機嫌、いや怒りを露わに廊下に出る。
そして暫く様子をうかがった。
どこをというと、兄たちの部屋である。
利守の部屋は、兄たちの向かいにあり、またちょうど半分ずつ兄たちの部屋を跨ぐようになっている。
よって、どちらの部屋の声か判断するには廊下に出てからじゃないとわからない。
「今日は正兄の部屋か」
溜め息をつきなら利守は帰省中の長兄の部屋の前に立つ。
すると。
『…くっつくな、ってば』
『やだ』
『いいかげんにっ、利守が起きるだろっ』
『良守が静かにしてれば大丈夫だから』
そんな漏れてきた声にもう起きたよバカ。と利守はいっそ呆れた。
まだ10にも満たない子どものいる部屋の向かいの部屋で良守を襲う長兄にも、結局流される(もしくは流されたいのかもしれない)クセに無駄に抵抗して五月蠅くする次兄に。
聞こえてくる会話からはまだ最中じゃないか終わった所だろうと思い、利守は襖に手を掛けて勢いよく開けた。
眼下には布団の中でちゃんと寝間着を着ていちゃこらしている兄たち。
どうやら寝る気はあるようだったのだけれど、それでも。
「いくら父さんとおじいちゃんがいないからって五月蠅すぎ。結界張ってよ」
弟にいちゃいちゃしていた所を見られた羞恥からか、良守は固まっていた。
けれど図太い神経の正守は笑ってゴメンと言う。
「いやぁ、もう寝ようと思ってたんだけど」
「どっちでもいいから。結界師でしょ」
「うん。ごめんね利守〜」
謝った長兄にじゃあね、と言って利守は襖を閉める。
直後、良守の「あ、と、としっ」という自分を呼ぶ声が途中で消えたのに、正守が結界を張ったのだと理解して安心して眠りにつけるなぁと、あくびする。
起きたらきっとよそよそしいだろう次兄に、詫び代わりのケーキをつくってと強請ろうと思いながら利守は再び布団の中に潜り込んだ。
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他人視点は正良の登場が少なくなって欲求不満になります。けど、好きなんです。
としょは多分兄達を反面教師にするので普通に結婚すると思います。
「あの二人に任せてたら家が潰れちゃう」みたいな。そして二人に「僕が結婚して子どもつくるから二人は安心してね」とか言うんです。
ホモの兄たちを持つと大変な弟。
2007/12/17
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