わらびもち
なに作っているの?
そう聞けば、汗をぬぐった良守はわらびもち、とだけいい、鍋の中身を必死にかき混ぜている。
わらびもち。
「和菓子、めずらしいんじゃない?」
「うっせ」
「なにその返事ー兄さんにひどくない?」
「酷くない」
白かった鍋の中身はだんだんと透明になっていっていて、その様子を見ていると、和菓子も作るのが大変だなぁと思う。
たまに帰省すると良守が洋菓子を作っていてそのときも結構大変そうだなぁと思っていたが、和菓子の方が体力を使いそうだ。
完全に白くなったところで、良守は用意していた、水を張ったボールに氷を急いで入れて、透明になったわらびもちのもと(?)をスプーンで適当にちぎり入れていた。
「たのしい?」
「…………」
その作業が楽しそうで、同じようにスプーンでわらびもちをすくって、氷水の中につけて指で滑らして、スプーンから離す。
じゃまするなとは言われなかったが、わらびもちが熱くて、なんども繰り返している良守がすごいと思う。
「すごいねぇ、良守は」
「……ふん」
「これ、すぐ食べていい?」
「いや、冷やしてからだっ」
氷水の中から一つすくって食べようとすると良守があわてて俺を見た。
十分、氷水で冷えてるけどなぁ。
「そ、それに味があんまりないんだぞっきな粉かけて食べないとっ」
「ああ、これ?」
冷蔵庫をのぞいたときにきな粉があったことを思い出し、取り出してわらびもちの一つにきな粉をまぶして食べる。
うん、やらかいし冷たいし、甘いしおいしい。
「こらっまだ食うなっつったのにーーっ」
「おいしいよ、良守」
「人の話をきけぇっ」
「ほら、鍋の中の固まっちゃわない?」
わめく良守に俺がそういうと、良守は我に返ったように鍋の中の残りのわらびもちをすくっている。
もう一つ食べたいなぁ、と言えばだめと怒られた。
けれど、
「良守も味見したいだろ?」
「冷えてからだっ。兄貴、冷凍庫から氷だしてボールに入れろ」
「はいはい」
氷が溶けてきたので、追加の氷を入れてやる。
やっぱり、この氷で十分冷えているだろうと思ってもう一つつまんでみたら、冷えている。
「また、とったし!」
「うん、おいしい」
「兄貴っ」
「ほら、おまえも食べなよ」
そう言ってもう一つ俺がわらびもちをつまんできな粉をまぶし、あーんと差し出すと良守は素直に口を開けた。
なんだかんだ言っても自分だって食べたかったのだろう。
そう思うとなんだか悪戯心がわいてきて、良守のくちもとまで持って行ったわらびもちを俺の口の中に入れる。
「あーっう、嘘つきっ」
少しだけ傷ついた目をした良守に、これくらいでと、おかしくなりながらちゅーをする。
「んがっ」
口移しでわらびもちを食べさせて、飲み込んでもキスを続けていると、良守の手からスプーンが落ちた。
鍋の中のわらびもちも、もうあと少しだけだし。
そう思った俺は、鍋の中のわらびもちが固まるっても良守を解放しなかったのだけれど、それに良守が気づくことはなかった。
まぁ、つまりそういうこと。
ごちそうさまデシタ。
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つまりそのまましちゃったんだと思います。
り、りはびりってむつかしい…。
08/07/21
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