チョコ


クリスマスが近づいてきた12月のある日。
兄貴が帰ってきた。
手みやげをぶら下げて。

32個もチョコレートが入ったその四角い缶にはサンタクロースがトナカイのそりに乗ってプレゼントを運んでいる絵が描かれている。
クリスマス用なのだ。

その中の一つ、白いトナカイがプリントされたチョコを一つほおばると中からコーヒーの味がした。

「うまい」
「そう」

にこやかに、笑って兄貴は同じものを食べる。

「コーヒーか」

兄貴は苦い顔をした。
あれ、兄貴ってコーヒー飲まなかったっけ。

「んー嫌いじゃないよ。でも、ほら、予想してなかった」

照れたような苦笑をし、兄貴は次にベルの形をし、赤い銀紙で包まれたチョコをつまむ。
口直し、と言った。
それは中までミルクチョコレートだったらしい。

「甘いねえ」
「そら、チョコだからな」

そう言った俺の唇に、今度は緑の銀紙に包まれたベルの形のチョコを押しつける(もちろん銀紙はとって)。
唇に当たった瞬間、溶けたチョコを一口で食べる。
甘かった。

ちろり、と兄貴を見ると少し疲れている気がする。
チョコは滋養強壮なのだ(と本に書いてあった)し、疲れたときは甘いものを食べたくなる。
だから、やっぱ疲れて居るんだろう。

「今日、泊まってく、の」
「うん。そのつもり」

疲れた兄貴になにかしてあげられるだろうか。
そんなコトを思った。

兄弟だけど、兄貴に好きだと言われて数ヶ月。
どきどき、と。
前とは違う緊張とうれしさが、俺の中に確かにあることをこのあいだ俺は知った。
けれど、兄貴にはまだ伝えていない。
真正面からは照れくさいし、ちょっとしたプライドがあって言えない。だって兄弟だし。
でも、疲れた兄貴に何かしてあげたら、そんな気持ちも少しは伝わるかも知れない。

これが人を好きになることなのかも知れないと、思った。


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自覚後よっし。
続きそうですがつづくとしても当分先です。
ツンデレよっしが書きたいなあ(どうもうちのはデレが大きい気がします)。
2008/12/12


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