餅つき






ぺったん、ぺったん。
二つめの餅つきは正守が杵をつき、繁守が餅をひっくり返す。

良守はその音を楽しみながら縁側で修史と餅を丸めていた。
鏡餅である。

「綺麗にできたねぇ」
「へへへっ」

大きくて平べったい丸い餅が二つ。
重ねてみると、6歳児が作った小さい餅も、その父親が作った大きい餅もどちらがどちらを作ったかわからないほど、綺麗な丸い形になっていた。

「みかん持ってくる?」
「まだいいよ。乾燥してから乗せようね」
「うん」

修史はそう言うと余っていた餅に手を伸ばし、片栗粉を手にまぶし直す。
良守の手のひらより少し小さいく餅を千切ると良守に渡した。

「あんこの入ったお餅作ろうか」
「うんっ」

甘いモノが好きな良守は年にこのときにだけ食べられるあんこ餅が大好きだった。
自分で作るのは初めてだけれど、今まで横で見ていたので大まかな作り方はしっていて、器用に餅を丸め、平たく伸ばす。
そこに修史がスプーンにすくっていたあんを落とした。

「周りのおもちを真ん中に集めて、きゅーって絞って御覧」

言われたとおり、良守は餡の周りの餅を中央に集め、ぎゅっと絞る。
少し間からあんが零れてしまったので父を見ると、修史は周囲の餅を伸ばしてあんを隠してくれた。

「そしたらね優しく手のひらで転がして…」

ころころ、と修史が自分で作った餅を暫く手のひらで転がしてから良守に見せると、餅の絞っていた所が平坦になっていた。
良守はそれを見ると丁寧に自分の手のひらの中で餅を転がす。
あんを零さないように、そっとそっと、と格闘している姿に修史は微笑みながら、良守と同じく甘いモノ好きな義父と長男の為にあんこ餅を作り始めた。

修史が二つめの餅を作り終えた頃、良守ができた、と大きな声を上げる。
差し出された手のひらを見ると、餅が薄くなって黒いあんが見えている部分もあったがやはり6歳児のつくる餅にしてはとても綺麗だった。

「良守は上手だねぇ」
「じょうずっ?」
「うん、すごく」

褒められてとても嬉しそうな良守は、何を思ったかその餅を持ったまま縁側の横の庭で餅をついている兄の元に走り寄る。

「良守?」

それに気付いた兄が杵を置き、頬についていた白い粉が拭き取ってやると、良守はくすぐったそうに笑いながら手のひらを差し出してきた。

「あんこ餅、作ったから食べて」
「俺に?」
「うん、おれね、はじめて作ったんだよ。じょーずだって!」

初めて作った餅を祖父でなく父でなく、自分にでいいのかと思わず正守が父の方を見ると、良守が自分で餅を食べると思っていた父も驚いていたがにこりと笑って、布巾ともう一つの餅を持って歩いてくる。

「上手に作れたからお兄ちゃんに食べて欲しいんだよね」

そう言いながら父は濡れた手を布巾で拭いた祖父にあんこ餅を祖父に渡すのを見て、正守は安心して良守の手から餅を受け取った。

「ありがとう」
「どーいたしましてっ」

小さな手から受け取った小さなぬくもりは、その形が無くなってもずっと正守の中でなくなることはなかった。










------------------------------------------------------------
おもちつきで…あの、遠夜は関西の人間なんで切り餅じゃないんです、切り餅の作り方知らないんであんこ餅にしてみました。
遠夜の方は丸餅でして、餅をついて、普通のとあんこ餅を近所に配ります。そんな習慣以外知らないので、適当ですみません。

墨村家も雪村家も旧家だし、きっと昔は餅ついて配ってたんじゃないかなぁ…と勝手な妄想です。でも農家じゃないよなぁ…とかも思いましたが(^_^;)

んでは今年も正良の歳でありますようにvv
07/01/01

閉じる