蝶のようにひらひらと動くから。
きっと猫の舌のように小さくて薄いんだろうと思っていた。














てふてふ












眠っている良守の顎に手を掛けて口を半開きにさせる。
暗闇の中でもそれは血の色を失わない。
そっと指でつつくと弾力があり、暖かい。
それだけで堪らない気分になってしまい、指を良守の口の中へ押し込めて優しく舌に絡める。
良守が呻き声を洩らすので、良守が好きな口蓋や奥歯の少し当たりを撫でた。

「んっ」

少し大きめな声を上げて良守が目を開けると同時に正守は二人だけを包む結界を作った。
ぼんやりとした目を向けてくる良守の目の前で、引き抜いた指をゆっくりと舐め笑う。

「あ…?」
「おはよ」
「あに、き?」
「うん」

完全な覚醒をする前に、と正守は良守の寝間着のボタンを外し出すが、良守がもう一度兄を呼んだ。
普段にない柔らかい口調は寝入りばなや寝起き、若しくは情交の際にしか訊くことが出来ず、正守は特にそれを好んでいる。

「なに?」
「きす、した?」
「ん?」
「おれに、したの?」
「なんで?」

先程まで良守の口内を好きかってしていた正守は、ばれたかなと思う。
それは指だったけれど。

「なんか、口が、あつい」

小さく開けられた口から見えた赤い塊。
ひくひくと動くそれに正守は思わず自分の舌を絡めた。
初めてそれに触れたとき。
猫か子どものそれのように薄いのだろうと思っていたけれど、思ったより肉厚で。
ああ、ちゃんと成長しているんだと安心した兄心の横で欲情した。
熱くて柔らかくて。
思いっきり噛みついて喰らいたい衝動は今でも変わらない。

「ん、ぅ、はっ」
「よしもり…」

咀嚼できない変わりに、隅々まで舐めるのが正守は好きだ。
良守もそれが好きなのだろう、喉を鳴らしながら正守の肩を掴む。
それをやんわりと制して、正守が良守の胸元へ手を滑り込ませた。

「あ、あにき、」
「なに?」
「ちょっと、待って、っていうか、なんでいんの」
「ああ、目が覚めたんだ。良守が抱きたくて帰ってきたの。だから、抱かせてよ」
「…っ」

ダイレクトな言葉に、良守の頬がかーっと赤くなる。
視線を一度逸らし、ぎゅっと兄の着物を握った。
了解を得ずとも正守は続きをする気だけれど、どうせならちゃんとOKを貰いたい。
正守は良守の答えを待つ。
暫く唸ってから良守は正守を見上げ、口を開けて正守の肩を掴む。
ひらひら、と動くそれが良守の顔ごと近付いてきて、正守のそれにからみつく。
慣れない飛翔は、それでも正守の欲を刺激し、正守は良守の頭を抱えて深く口付ける。
呼吸の合間に聞こえた、艶めかしい小さな羽音。
それが良守の答えだった。

















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夜這い正守。
別ににょたじゃなくてもよかったでしょうか。でも、にょたイメージで。


08/04/21

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