次男の憂い
「ここがイイの?」
「違う、もっと奥!」
「えー、ここ?」
「ちがうってば!もうちっと右でっ…」
「もう、わがままだなあ。じゃあ、ここがイイの?」
「あっちょ、ソコはっ」
ぼと。
「ぎゃーーーーっっ」
「なにやってんのさ…」
昼間のキッチンで騒ぐ姉と兄に利守は溜め息を吐く。
偶々通りがかったキッチンでなんだかいかがわしい会話が聞こえて、まさかなぁと半分好奇心で覗いてみた。
すると、甘い匂いと共に姉の叫び声。
「利守っ聞いてくれよぅ!正守が適当な所に苺を置くんだ!」
と、いう姉、良守の目の前には50cmほどの高さのケーキで作られようとしている城が建設途中。
二階部分になる場所の壁はまだなく、スポンジケーキでできた床の上にクッキーやらなにやらでできた家具。
「良姉、凝りすぎじゃない?」
「だって、せっかく正守がいるんだし。ケーキの中におかしって楽しいだろ?」
「でもねぇ、正兄…わかってやってんでしょ」
「なにが?」
にっこりと笑った兄の顔を見て、姉はきょとんと首を傾げた。
それは弟から見てもとてもかわいらしい。
姉は童顔だからそうするとハタチを過ぎているとはとても思えない。
けれど。
「別にボク、正兄と違うんだからさー。家の中でいちゃつかないでよ」
「いちゃっ」
「あーごめんごめん」
利守の姉と兄はデキていた。
姉は弟である正守と利守を分け隔てなく接しているつもりだろうけれど、正守に関しては少し甘い所があった。
利守にも甘いのだけれど、正守にはなにをされても受け入れている。というか、気付かないだけかも知れないが。
兄は、姉が関わらなければ弟である利守に善くしてくれる。
けれど、姉が関わると独占欲が強いのか敵視してくる。利守は昔から姉に正守と同様の気持ちは抱いていなかった。
なぜなら、利守にとって姉と兄はセットのようなものなのだ。
自分がおまけのように感じている訳ではないけれど、物事を客観的に見てしまう利守はどうしてもそのセットから一歩離れて観察してしまう。
だから牽制しなくていいとことあるごとにいうのだけれど。
兄はやっぱり牽制してくる。
さっきの会話だって、家にいまいるのが利守だけだからだと知っているからだ。
「もう、いい加減にしてよね、ホント」
「と、としもり、俺はべつにっ」
「ごめんごめん、あと少しで完成するから、したら呼びにいくよ」
「じゃ、ボク買い物行ってくる」
慌てる姉を完全無視して、利守はキッチンから離れる。
途端に結界が張られた事に気付き、今更だよと思ったあとで。
「彼女、作ろうかなぁ…」
と姉に聞かれたらちょっとだけ騒ぎになりそうなことを呟いた。
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次男は利守です。
としょは14歳くらい。多分
08/05/03
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