違和感
「よぉ」
控えめに開けられた扉から表れたのは、先日白哉と死闘をした旅禍である一護だった。
白哉は、横になっていた身体を起こして彼に目を遣る。
「何しに来た?」
「俺、明日帰るから」
「そうか」
「ルキアは、残るって」
「…そうか」
なぜ、それをわざわざ言いに来たのか。
どうせすぐ、自分もここから出て行く。
そうしたら間もなく分かることだ。
だが。
白哉はその疑問をぶつけたりはしなかった。
「あのさ」
「なんだ」
「その、あんた、ルキアのこと大事か?」
「…当たり前だろう」
「それは、妹だから?緋真さんの忘れ形見だから?それとも…」
「愚かなことを訊くのだな」
なんとなく、白哉は一護の言いたいことがわかった。
ルキアを妻にするつもりなのか、それを問いに来たのだろうと。
「あれは、私を兄と呼ぶだろう」
兄と慕って来るものを、妹以外にどう思えと云うのだ。
そう白哉は言外に言った。
そして、幾分か表情が緩んだ一護を確認する。
「だが、お前を婿にはさせられんな」
「はぁ!?」
一護の、予想外驚きに白哉は面食らう。
図星という顔でもなければ、見抜かれた羞恥が浮かぶ顔でもない。
心底意外そうだった。
「…ルキアが好きなのだろう?」
「や、そーゆ、意味じゃねぇって」
「では、どういう意味だ?それを聞きに来たのだろう」
「…な、なんとなくだよ!別にそれを聞きに来たんじゃねぇ!」
「うるさい」
「っだ、だから、謝りに…ついでに」
白哉が静かにいさめると、ここが救護棟だと思い出したのか、一護は声の大きさをおとして意外なことを言った。
「謝る?」
「だから、色々、生意気なことを言ったから」
「感謝する、と言ったのは聞こえなかったか?」
「聞こえたけど!」
「なら、それはもう終わりだ」
これ以上は聞かない、とばかりに白哉は窓の外を向く。
「明日は、見送りに行こう」
「…おう」
「明日を過ぎれば、もう会わぬだろう」
「そうだな」
「…お前が、来てくれて皆救われた」
「…」
「だから、お前は余計なことは何も考えず出て行けばよい」
「なあ」
「なんだ」
ゆっくりと、白哉は一護の方へ視線を戻す。
少しだけ、困った顔をしていた。
「俺も、感謝している。あんた達のおかげで」
その先は言葉にはしなかったが、一護はもう一度ありがとう、と呟いて。
静かにその場を去っていった。
扉が、音を微かに出して閉まった。
オレンジ色の太陽が沈んだように、その場から光がなくなったと白哉は感じてしまった。
その気持ちが、何かを自覚してはならないと。
白哉は目を閉じた。
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何が違和感かは、後々出したいです。
07/01/27
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