叶わない想いのために始めたことが。 もう一つの想いを生み出した。 愚か者が恋をする 「なぁ独角」 偶にあるくつろぎの時間を。 「もし……」 偶々、紅孩児と独角の二人で過ごしていた。 「もし、絶対に好きになってはいけない人を好きになったらどうする?」 その問いが紅孩児の口から出たことに独角兒は少々驚いた。 この男と恋愛沙汰は無関係に思えていたから。 「あ〜、好きになったらいけないってどーゆー?」 「例えば…人間とか、絶対に好きになってくれない人」 誰のことを言っているのか。 それを問うことはしてはいけないような気がする。 「好きになったらしょうがないだろ。禁忌でも、好きになってくれなくても好きなら好きでいーんじゃねぇ?」 簡単すぎる答かもしれない。 それじゃ済まない恋かもしれない。 でも、それは真実でもある。 「そうか」 「ああ」 少しだけ、紅孩児が笑う。 つられて独角兒も笑った。 「なぁ紅、好きなヤツいるのか?」 気になって笑いに任せて独角兒が訊いた。 「…どうだろな。お前は?」 かわされてしまったけれど。 「いる。大事なヤツがいる」 「そうか」 「ああ」 独角兒のはっきりした応えは、紅孩児の笑みを深くした。 真夜中に紅孩児がある目的地へ向かって歩いていた。 コツコツと廊下に響く自分の足音が耳障りだ。 『大事なヤツがいる』 今日聞いた独角兒の言葉が紅孩児の頭の中で回っていた。 はっきり言えるコトへのうらやましさ。 それしか感じなかった。 もう、独角兒に愛されている者への嫉妬など感じなかった。 それに嬉しいのか哀しいのかわからない自嘲の笑みが思わずこぼれる。 ある、ドアの前で紅孩児が止まる。 「いーよ入って」 タイミングよく中から声が聞こえる。 いつものコトだが。 何故、ここに立つだけで自分が来たことが分かるのだろうか。 …人間のくせに。 紅孩児は頭の中で罵倒するが、それはむなしいことだった。 ノックもせずに紅孩児が部屋に入ると、その部屋の主の姿が見えなかった。 気配はするのだが。 「おい?」 「ちょっと待って。探し物がね。あ、あった」 そう言いながら其奴は奥の方から埃まみれになって出てきた。 手にしているのは…? なんだか分からない小瓶。 金色の液体らしきモノが入っている。 「なんだそれは」 「ん、内緒。ちょっと身体の埃落としてくるから待ってて」 其奴――ニィは机の上に小瓶を置いて、部屋の備え付けのシャワールームに入った。 相変わらず、部屋は汚い。 数日前に来た時と同じなのか良くなっているのか汚くなっているのか、判断が付かないくらい。 だが、ベッドの上だけはいつ来てもキレイだ。 彼曰く、寝るトコくらいは気持ちいい方がいいじゃない?だそうだが。 待つにもそのベッドの上にしか座る場所はなく。 机に置いて行かれた小瓶に手を延ばし、ベッドに座った。 金色の、なんだかとろりとしている液体。 甘い匂いのする、…蜂蜜? 「王子様?」 紅孩児がふと見ると、とニィが目の前にいた。 白衣ではなくて、黒いシャツに黒いズボンをはいている。 セットのとれた黒い髪が水に濡れてより一層、黒く輝いて。 髭を剃れば色男なのに。 いつもの煙草の匂いと違って石鹸の匂いが漂ってきた。 さっきの金色の小瓶を紅孩児からニィが取り上げた。 「それ…」 「あ、これ?」 「何で蜂蜜なんか探してたんだ?」 「蜂蜜?これが?」 「違うのか?甘い匂いするけど」 「え」 慌ててニィがその瓶のふたを開けて匂った。 そして困ったなぁ、とこぼしてニィはふたをして小瓶をベッドに投げ、ガラクタの山を見る。 何かどうしても必要なものを探していたようだ。 「お風呂入って来たし、また埃まみれになるし。でも、ないと困るしなぁ」 ニィは頭をポリポリかく。 紅孩児がどうしたのか、と見ているとニィはがらくたを次々と足で蹴りながら目的の物を探している。 探している物はそんなに大事なのだろうか。 「何探しているんだ?」 「ん〜?聞きたい?」 聞きたいと言うよりさっさと探し物を終えて欲しい、と言うのが紅孩児の本音だが。 探し物は確かに気になる。 あのニィ博士が必死に探している物。 「差し障りが無かったら」 紅孩児の律儀な応えにニィが少し笑った。 彼らしい、遠慮した応え。 それだけに教えたときの反応が予想できて楽しい。 「潤滑剤」 「は?」 「だから、君に使う潤滑剤。前にシてから結構たったでしょ。どこにしまったのか判らなくなって」 「!?★※◯▽刧煤I!」 ニィが思った通り、紅孩児は真っ赤になって言葉も出なかった。 「うん?」 しかし。 とぼけたフリをしてニィが紅孩児のほうに向くと。 「ってちょっと!そんなもの投げないでよ!!」 真っ赤な顔で、半泣きで。 紅孩児は蜂蜜の小瓶をニィに投げようとしていた。 「わかった、謝るから、ボクが悪かったってば!」 ニィが焦って両手をあげて降参すると、紅孩児は小瓶を軽く投げてニィに寄越した。 それをニィは、机に戻す。 「俺はもう帰る!!」 ベッドを降りながら紅孩児が声を荒げたが、ガラクタにつまずいた。 それをニィは支えて再びベッドの上に寝かせる。 「大丈夫?」 上からニィに覗くように顔を見られ、紅孩児はまた少し赤くなりそれを隠すためにそっぽを向いた。 「うるさい。そんな物を蜂蜜なんぞと間違えるんじゃないっ」 「う〜ん、そんなこと言われても。同じ形の容器だし、色も似てたし」 「っそもそも、食べ物やそーゆー物をいい加減に扱うなっ」 「うん、ごめんね。次は気を付けるから」 困ったようにニィが笑う。 それに紅孩児は閉口して。 「王子様?」 「もう今日は帰るっ」 暫くしてニィが声を掛ければ、紅孩児は目も合わせずに帰る、と言いだし起きあがろうとじたばたする。 「帰る?どうして。せっかく時間が出来たのに」 が、口で説得しようとしながら、ニィは紅孩児を組み敷いた。 逃げることの出来ないように。 「ね、シよ?無くても痛くないようにするから」 ニィは紅孩児の紅い髪を一房掬って口付ける。 そうされるのを紅孩児が好いているのを知っているから。 紅孩児は素肌に直接触れられるよりも、額や髪にキスされる方が好きだ。 その方がより安心できた。 「好き、に、しろ」 「じゃ、お言葉に甘えて」 目を瞑って息を吐いた紅孩児の首筋にニィがキスをして、それが始まった。 「う、ん…ぁ…」 決して狭いとは言えない部屋の中で。 甘い声と淫らな音だけが響く。 「イきたい?」 ニィが紅孩児自身を弄りながら訊くと、紅孩児はニィを睨んだ。 そんなことを訊くな、と瞳で言って。 ニィはそれに笑いで返し、紅孩児自身を絶頂に導くために手を早めた。 「あ、やぁあっ」 それだけでイってしまった紅孩児がはぁはぁと荒い息をつく。 ニィは手に付いた紅孩児が出したモノを、後孔に塗っていく。 少しずつ、慣らして。 「ぁ…」 「ひくひくしてる」 ソコは待ちわびていたかのようにニィの指を飲み込んでいった。 が、やはり暫くしてなかったので、まだ硬い。 「痛い?」 「へ、っき…」 平気とはいっても、紅孩児の声は辛そうで、ニィは何かないかと考える。 ふと、ニィが部屋の隅に目を向けると。 蜂蜜の入った小瓶。 「ちょっと待ってて」 「んっ」 ニィの手から解放された紅孩児の躯がベッドに沈む。 荒い息を付きながら紅孩児がニィが行った方向を見ると、ニィはその小瓶を手に持って戻ってきた。 「それ…」 ニィは紅孩児には答えず瓶のふたを開けて指に蜂蜜を絡める。 そのまま、ニィは指を紅孩児の口に持っていく。 甘い匂いにつられて、紅孩児はそれを舐めた。 「甘い」 「これ使おっかv」 「使うって…」 言うが早いか、ニィは蜂蜜を紅孩児の腹に少し流す。 冷たさに紅孩児が眉をひそめると、それを舐め取った。 「ん…やぁ」 紅孩児がそれに声を漏らすと、ニィは今度は手の上に蜂蜜を取り、紅孩児の下半身に塗りたくる。 瓶が空になると、それをベッドの下に落とした。 「おいしそうだね」 金色の蜜が塗られた紅孩児自身は、硬く上を向き自身からも蜜が零れるように流れていた。 それをニィが銜える。 「っ……!!」 ニィは全体に付いている蜂蜜を舐め、紅孩児に快感を与えた。 銜えながら手で後孔をつついて。 蜂蜜のたっぷり付いた指はすんなり中に収まった。 一掻きした後、2本目も軽く入り。 ニィは紅孩児自身から口を離し、後孔の状態を確認する。 「やっぱ、こーゆーのあった方がいいよね」 十分柔らかくなったのか、そこがじゅぷじゅぷという音を立てた。 が、ニィはまだ指を抜かず、ソコの感触を楽しむ。 熱く、柔らかいソコを。 「はっ…あ、っん…あ、」 「ね、気持ちいい?」 ニィが問うと紅孩児はいやいやをするように首を振った。 それもやはり、訊くなとの意思表示で。 「ま、見ればわかるけど」 ニィが目をやったソコは限界まで来ているのか、先走りの汁が溢れている。 しかし、ニィはそこにはもう触れない。 それに反して後孔を弄る手の激しさは増して。 「も、……やっぁ…」 イくにイけない状態に紅孩児が自身に手を伸ばすが、それをニィが掴んだ。 「や、はな、せっ」 「ダメ。コッチだけでイってごらん?」 そう言うとニィは更に激しくソコをかき混ぜる。 淫猥な音が紅孩児の耳を刺激し。 「あ、やあっ」 「イイ?」 紅孩児の耳元でニィが囁く。 いつもとは違う、低い腰に来る声で。 与えられる全てが紅孩児を刺激して。 「ああっ、も、イくっ」 2度目の射精をした。 「いい子だね。じゃ、ご褒美」 ニィは紅孩児の息も整わないウチに。 ソコに、自分のモノを押し込んだ。 「っあ――――!!」 叫び声みたいな嬌声が紅孩児から上がる。 普段は。 真面目そうに、気難しそうに。 澄ましている彼が、こうして乱れている様はとても。 言い表すことができないくらい、とても―――――。 「たまんないって、ホント」 呟いたニィの声も聞こえないのか。 紅孩児は揺さぶられる度に、ただ喘ぎをもらす。 ニィは紅孩児のイイ所を突いて。 紅孩児はそれに合わせて身体を揺らして。 二人で絶頂に向かっていった。 「ニィっ…もう」 「うん、イこっか」 ニィが最奥を思いっきり突いた。 「っあ―――!!」 「んっ」 紅孩児が欲を吐き出して。 ニィもその一瞬後、イった。 ニィが紅孩児の上に覆い被さって。 首筋に頭を埋めて、荒い息を吐く。 部屋に二人分の息づかいが響いた。 「もう、年だね―ボクも。だいじょ―ぶ?」 ニィが少しが起きあがって紅孩児を見ると、彼はニィよりは回復が早くて。 「…重い」 と呟いた。 「ああ、ごめん」 ニィがどこうとするが、紅孩児は腕を回してそれを阻止する。 重いと言っておきながらの、この行動にニィが苦笑した。 誇り高い王子の甘え方。 ――君は、僕を好きになってくれただろうか。 ニィは口には出さずそんな問いをした。 誰かを愛している部下への想い。 それは断ち切らなくても、気晴らしに僕を使えばいい。 そう言ってニィは紅孩児を抱き始めた。 最初は流されていた紅孩児の態度も、少しずつ甘えるような仕草になった。 だけど、もう時間がない。 もうすぐ本格的に始まるだろう。 そして、彼は自分から離れていくだろう。 ――あんなババァの相手なんかするより、こっちのほうがいい、なんて思ってはじめたことなのに。 それでも、計画は止まらない。 それならばできるだけ、彼を護ろうと思う。 ニィが出来る方法で。 「全てが終わったら…」 「なんだ?」 「ううん、なんでもないよ」 怪訝そうな顔をする紅孩児に、ニィは軽くキスをする。 そして、まだ紅孩児の中に入っていたモノを軽く揺する。 「っあ、」 「もう一回、大丈夫でしょ」 浅黒い肌にを赤く染めて、色っぽく喘ぐ紅孩児は返事をする代わりにソコを軽く締め付けた。 ニィは軽く笑って腰のグラインドを激しくする。 「ぁ、んっ……ニィっ」 「うん」 ――好きだよ。 そう言おうとして、ニィは唇を噛む。 今は言ってはいけないだろうと思うから。 ――全部終わったら、君だけの為に…。 叶うかどうかすらわからない希望をニィは心に仕舞う。 そして、紅孩児も言えなかった。 ニィがそんな思いでいることを知らなかったし、知らされなかったから。 そして彼らは別離をすることになる。 ---------------------------------- 2002/9に途中まで書いて放置していました。 …今よりエロいし、上手い気がします…。 最後の少しだけ付け足してそのままUPです。 ニィ紅は色々書いてるので少しずつUPしていきます。 07/02/11 |