HappyValentine 2月が来ると町中が赤とピンクとハートだらけになる。 毎年意識をすることもなくすごしていたけれど、今年は気になる。 紅麗にあげるべきか否か。 別に紅麗はバレンタインだとかどうでもいいとか思ってると思うけど。 万が一、欲しがっていたらどうしよう。 多分俺があげる側だと思うんだよな。 紅麗からもらうのも俺としては嬉しいけど、多分『彼氏』はあっちなんだ。 だからあげるのは俺なんだと思うんだけど。 だから色々考えちまう。 例えば。 紅麗が欲しがっているのにあげなかったら、紅麗は悲しむだろうし。 欲しがってないのにあげたら、なんだこいつ、とか思われるかもだし。 もしかしたら紅麗のが用意しているかもしれないし(多分この確率は凄く少ないけど) ああ、男同士って難しい。 この際直接紅麗に訊くか? いやでもなぁ…。 頭を掻きむしって悩む、けれど答えはでない。 だってこれは数式のように公式がなければ=でも繋がらないものだから。 「ふ、風子に訊こうかな…」 風子は俺が紅麗を好きだと言うことを知っている数少ないヤツである。 風子がつき合っているのは雷覇で、その雷覇は紅麗の部下だからその経由で伝わってしまったらしい。 ちょっとからかわれ、俺もからかったけれど、お互い面食いだ、ということに落ち着いた。 多分風子は雷覇にチョコをあげるだろう。 風子に言って雷覇に何気なく訊いてもらおう。 おっし、そうと決まればさっそく聞きに行かなきゃだな! 「女々しくなったわね、烈火」 ムカッと来ながらも身に覚えのある台詞に俺はぐうの音も出ない。 風子を怒らせたら雷覇に訊いてもらえないし、ってか女々しいのもちょっと自覚してるし。 まぁいいけどぉ、なんて偉そうにいいながら、俺の奢りのパフェを風子はぱくっと食べた。 …そのパフェはここの喫茶店で一番高いヤツだ。 くっそー、足元見やがって(泣) 「頼む、マジで」 「でもさ、訊かなくてもいいんじゃない?」 「なんで」 話聞いてたのかよ、コイツ。 という目を俺がすると、ばかねぇ、と言われた。 「紅麗がいくら現代人離れしてついでに常識知らずって言っても、世のイベントくらい知ってるでしょ」 なんだそりゃ。紅麗を古代人扱いするなっての。 そりゃ、生まれは戦国だけどそれは俺も同じだっ! それに紅麗は常識知らないわけじゃないぞ。 むぅっとした顔をしているだろう俺を、風子が面白そうに見るわけでもなく話しは続く。 「大体彼、今社長さんなんでしょ。だったらイベントにも敏感だろうし」 今、紅麗は自分で起こした会社の代表で日々忙しくやっている。 何をしているのかは知らないけど。 ちなみに雷覇と音遠はその部下。秘書だっけ? 「だったら、恋人の為の日とも言えるバレンタインに恋人からチョコもらってイヤな訳ないでしょ」 なんだか強引な気がするのは俺だけか? 「逆に言うと、あげなかったら悲しませる可能性のがおっきいのよ」 「そ、そうか?」 そうなのか、な。 でも、自信満々に言われるとそんな気がしてきた。 んじゃやっぱ、あげてみようかな。 「んでさ、あんたチョコ買うの?作るの?」 風子がここに来て初めてニヤリと笑った。 何か企んでいるときの、ニヤリだ。 が、それは分かっていても、言われたことは気になる。 買うのか作るのか。 バレンタインチョコを男が買うのは恥ずかしい、っていうか異常だ。 でも作るって言っても俺はその類のものを作ったことがない。 多分紅麗はそんな甘いものは好きではないと思うから、チョコを固めただけってのは避けたい。 避けたいが、凝ったバレンタインチョコの作り方なんか分かるわけがない。 「わかんねぇ…」 「んじゃさぁ、あたしと作ろうよ」 「はぁ?作れんの?」 思わず本音で返事をしたら、風子に殴られた。 だって、風子は決して家庭的には見えない…。 といったらまた殴られた。 いてぇな、おい。 「作る気ないなら、知らないよ」 「いや、すまねぇっ作る!作らせて頂きます!」 と、言うわけで13日に俺と風子はバレンタインチョコというものを作った。 チョコというかチョコケーキ。 ブラウニーとか言うアーモンドの入った四角いケーキで、風子曰く。 『初心者で簡単手作り!しかも見た目はかなり美味しそうで手の込んだ感じよ!』 だそうだが、その言葉通り、自分で言うのもなんだがいいデキだ。 結構作るときは大変だったけど。 分量とか混ぜ方とか五月蠅いんだもんよ、風子。 それに小麦粉は振るうだとか、卵白と卵黄を混ぜないとか。 ややこしいっての。 でもこれでも初心者向きって事は、普通のスポンジケーキとか俺、作れねぇだろうな。 風子に頼んで良かったぜ。 ラッピングも手伝ってもらえたしな。 紅麗のイメージだと黒と紅って感じだけど、それはバレンタインでどうよ、と言われたので。 赤い箱にケーキを入れて、白いリボンで結んでビニールでコーティングされた紙袋(赤)に入れた。 なんだか、それを見る度にすごく恥ずかしいんだけど。 これを俺が紅麗にあげるなんてよ。 でも勇気出して今俺は紅麗の事務所の前にいる。 事務所は紅麗のウチの近くのビルの一室で、でもそろそろ引っ越したいとか言っていた。 会社が大きくなって来だして、自分のビルが欲しいんだって。 いや、そんなことは今どうでも良くて。 おっし、チャイム押すぞ〜(事務所の方の鍵はもらってない) と、意気込んだのにチャイムを押す前にドアが勝手に開いた。 「あら、烈火。何の用?」 ドアは勝手に開いたのではなくて、音遠が開けたのだ。 …今日は本当は会いたくなかった相手で。 でも、そういうわけにはいかないから覚悟してたんだけど。 これはないんじゃねーの、タイミング良すぎだぜ。 「紅麗に用があって。お前はどっか行くのか?」 後ろ手に荷物を隠す。 こいつには見られたくない、何も言われたくない。 「昼食買いに行くのよ。あんたのも買ってきましょうか」 「いや、食ってきたからいいよ」 昼に俺がここに来たのは意味がある。 紅麗は忙しいだろうけど昼食時なら相手してもらえるだろ、と思ったからだ。 でも食べずに来たらまるでメシを強請ってるみたいでイヤだったから食ってきた。 「そう、ならゆっくりしていきなさい」 言うなり音遠はどっかへ行った。 何処へ買いに行くのか知らないが、まさか紅麗にコンビニの弁当とか食わせるわけない。 多分帰ってくるのは遅くなるはず。 それならゆっくりしていこうv 「紅麗ーいる?」 いるってわかってけどな。 奥の部屋へ続く廊下を歩く。 けれどそこには紅麗はいなくて。 社長室へと繋がるガラスのドアを覗くと、紅麗がいた。 デスクに座って何かノートパソコンに打ち込んでいる。 俺が来たと気付かないほど真剣に仕事をしているみたいだ。 声を掛けない方がいいかもしれない。 そう思って俺は簡易キッチンに向かい、勝手に冷蔵庫を開けて何故かあった炭酸ジュースを飲む。 飲んでからコーヒーメーカーで紅麗にコーヒーを入れる。 ドリップされていくのを見ながら考える。 集中している紅麗の邪魔はしたくない。 でももたもたしてると音遠が帰ってくる。 せめてこれだけ渡してから帰りたい。 どうしても直接渡したい。 …でも、やっぱ邪魔は良くないよな。 グズグズしてると音遠も帰ってくるし、やっぱ。 紅麗の部屋で寝てようかなぁ。明日も学校休みだからもし紅麗が帰ってこなくても平気だ。 コーヒーは音遠が帰ってきたとき出してくれるだろう。 そう思ってさっき通った廊下に向かおうと振り返ると。 「何処へ行く?」 と、紅麗が俺の真ん前にいた。 「く、紅麗」 俺に気付いてたんだったら、最初に返事くらいしろよなぁ。 コレでも結構悲しかったんだ。 「どうした?学校は」 「が、学校は休みだよ。土曜だし」 「そうか。で、来たばかりで何故帰る」 そう言いながらも紅麗は俺の手を引いて奥へと連れていった。 冷たい手が気持ちよくてぎゅっと握ると、紅麗が口元だけで笑ったのが見えた。 「んだよー」 「いや、甘えただと思ってな」 「いいじゃんー別に」 へへ、と自然に笑いが零れた。 ああ、紅麗が好きだなーって思う。 社長室の客用の黒いソファに座らされた。 すると赤い袋が紅麗の目に晒されるのは当たり前で。 「コレはなんだ?」 聞かれるのも当たり前で。 あげる、と決めていたもののなんだかやっぱり照れくさかった。 それでも顔を赤くしながら。 「紅麗にあげる」 と、差し出せば受け取ってくれる紅麗が、嬉しくて。 「バレンタインだから…やる」 紅麗は一瞬驚いた顔をして、その後直ぐに俺を抱きしめた。 すごい力強く引き寄せられたのに、全然苦しくも痛くもなくて。 逆にとてもふわりと、居心地のいい包容だった。 「あのさ、嬉しい?」 「ああ、嬉しい。ありがとう、烈火」 ありがとう、ともう一度言って紅麗は俺に軽いキスをした。 ちゅっと音がして離れたけれど、すぐにまたくっついてくる。 俺の唇を舐めたり、甘噛みして紅麗は遊ぶようにキスをした。 暫くして離れた。 全然ディープなのじゃなかったのに、凄く気持ちよかった。 キスが終わっても俺が紅麗に抱きついていると、紅麗が今日はバレンタインか、と呟いた。 「紅麗?」 音遠は紅麗にあげなかったのかな。 それとも仕事が終わってからあげるつもりだったのかな。 「いやな。今日は珍しく雷覇が休むと言っていてな。何があるんだと思っていたんだが」 「ああ、風子とデートしてるんだよ。風子が言ってた」 「そのようだな」 クスクス笑いながら会話する。 紅麗は忙しいから俺に構う時間もあまりないはずなのに。 こうして一緒に笑ってくれることが、とても嬉しくて。 「あのさー、紅麗。俺、今日紅麗の部屋で待ってていい?」 仕事の邪魔をしたくないから、すぐ帰るつもり。 音遠が戻ってきたら帰ろう。 だけど、ちょっと特別な日だから。 夜遅くなってもいいから。 一緒にいたいって思うのは女々しいか? 「そうだな。今日はそんなに遅くならないから一緒にどこかに食べに行くのもいいな」 「マジ!?」 「ああ。仕事が終わったら電話する。それまで部屋で待っていろ」 「おう!」 無邪気に俺が喜んでいると、紅麗がなんだかニヤッと笑った。 決して人がいいと言える笑みではなかった。 「陽炎には泊ると言ったか?」 そして言った内容も、人がいいと言える内容ではなかった。 「っー///」 泊る=アレなわけで。 俺は未だにそれに慣れてないから、真っ赤になった。 それを見て紅麗が笑う。 「わ、笑うな!」 「電話、しておけよ」 「〜っしとくよ!」 半ば自棄になって叫ぶ俺を見て、また紅麗は笑う。 笑いながら俺を抱きしめ、音遠が帰ってくるまでずっとそうしていた。 紅麗から電話があったのは、8時頃。 車でマンションまで迎えに来てくれた。 予約してくれてたと言う、郊外のイタリア料理の店に行った。 イタリア料理と言えばパスタかピザ、のイメージだったけど。 肉も魚も旨かった。 ついでにシャンパンも飲んだ。 マナーなんてわからなっかったけど、個室だったので気にするなと言われて。 食事を楽しんで、それから紅麗の部屋に戻った。 それからは言うまでもなく。 俺が美味しく頂かれたのだった。 ---------------------- 遠夜にしてみれば長めのお話になりました。 …これは本当はVDにUPしたかったんですが、ネオチしてて。 ってかそれ以前に間に合わなくて。 仕方ないのでWDにUPってことにしました。 すみません。 イベント事って大好きなのですが、どうも筆が進まない。 何故なんでしょう…>< ってか音遠はどこに何を買いに行ったのでしょうか…。 出前取るかしろよ…。 04/03/14















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