兄弟
小金井に剣術のレッスンを付けてやる紅麗。
魔道具はなくなったけれど、強くあるために二人はこうして時々手合わせをする。
俺は元々剣術なんか出来ないし。
多分、やらせてもらえないだろうし、見てるだけ。
今日もずっとそうしていたけど、そこに音遠が来た。
「貴方はしないのね」
「必要ないし」
俺は正直苦手、こいつ。
だって、いっつも紅麗の傍にいるし。
俺よかずっと紅麗のこと分かってるし。
ん?それは嫉妬だろうって?
分かってるけど、分かってるから苦手なのー。
紅麗がこいつを大事にしてるって分かってるから。
「なら何故来るの?」
「ん〜、なんとなく」
「意味がわからないわ」
「あんたにはわかんねぇと思うよ、うん」
まだ訝しそうに見ていたけど、俺は音遠から視線を外して再び紅麗達を見る。
俺が小金井と一緒に紅麗のトコに来るのは紅麗に合うため。
俺一人じゃ来れないから、小金井の付き添いって事で来てる。
でも、来るたびに来ない方がマシだっていつも思う。
俺が入り込めない絆が二人にあって。
それを見るたびに、心臓が痛くなる。
それでも付いてくるのは、やっぱり紅麗が好きだからで。
自分で自分を苦しめてるって分かってても、二人を見る。
真剣な顔だったり、ちょっと微笑んでいる顔だったり。
そんな顔が自分にも向けられるときは来ないだろうと、諦めながら。
例えば紅麗の綺麗な顔の火傷がなかったら。
例えば紅麗の綺麗な掌の傷跡がなかったら。
例えば紅麗の綺麗な目に翳りがなかったら。
なんて考えたってダメだ。
それは俺たちの力の及ぶことではなかった。
俺の所為で異端児扱いされたのも。
里が攻め落とされたのも。
現代に一緒に飛ばされてしまったのも。
そして俺だけぬくぬく幸せに生きていたのも。
何も知らなかった俺に、何が出来たのだろうか。
俺と紅麗はその括りを一生捨てられないだろう。
いい意味か、それとも逆かは判らないけれど。
きっと、後者だと思う。
どうしようもないことなのだ。
全て、俺がどんなに願ったって叶うことのない願いなんだ。
あの、大きな手で小金井にそうするように。
触れて欲しいと願うことは。
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烈火はまだ恋愛感情は無自覚です。
弟として愛されたいなぁって思ってます。
07/05/12
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