金木犀 紅麗のマンションの近くにはいっぱい、金木犀の木がある。 凄く、いい匂い。 「いい匂いだな、紅麗」 「ああ」 手をぎゅっと握って、人のいない朝方の道を歩く。 寒いくらい温度の下がった気温に、音のない住宅街。 その中で香る金木犀の匂いは、それだけが鮮やかでなんだか。 「俺たちだけって感じ」 「そうだな」 「金木犀の匂いも、俺たちだけのって感じ」 「ああ、そうだな烈火」 コンビニ帰りの散歩。 朝だからあんまり大きい声も出せないし、騒げない。 けど、そんな静けさも偶にはいい。 「甘くて烈火みたいだな」 「え?」 「甘くて、烈火みたいだ」 紅麗の言葉に、俺の顔が赤くなる。 ぎゅーっと紅麗の手を握る手に力を込めた。 「甘い、かな」 「甘いよ。お前は金木犀よりも甘い香りで、蜂蜜より蕩けるように甘い」 俺は恥ずかしくて恥ずかしくて。 でも、嬉しくて。 「俺の、甘いの、好き?」 「ああ、好きだ」 俺も、と呟く。 俺も好きだよ、と。 金木犀よりも、甘い紅麗が大好きだと。 ------------------------------ 遅くなりまして本当にすみません、水無月様…。 もし見ていた下さいましたらご自由にお持ち下さい…。 05/07/26

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