目玉焼きと玉子焼き







ぐしゃぐしゃ。
眉を顰めて潰れて丸くなくなった黄色と白くなりかけていた透明を混ぜる。
一枚は成功したのにな。
がっかりして、適当に味付けをしてクルクルと手早く巻き直した。






「…なんでおまえと私のが違う?」

朝、紅麗が大体ご飯を作ってくれるんだけど。
紅麗が忙しい時に止まったりすることもあって、そーゆーときは俺が作ることにしている。
だから、少しずつだけどレパートリーも増えている。
んだけど。
未だに、目玉焼きをよく失敗する。
それを紅麗は、

「一旦、器にタマゴを割って入れたらいいだろう?」

と、言う。

けれど、俺は。

「そんな女みたいにチマチマできねぇってば」
「じゃあ、少し丁寧にタマゴを割ればいいのに」
「だって、あれ、脆いんだもん」

そう言ったら、玉子焼きを破らずに巻けるんだから気をつけたらできるだろうと言われる。
そうなんだけど。
あれはあれで、丁寧にできちゃうんだ。

「で、それは黄色すぎないか」
「ん?だって味付けほぼ砂糖だけだから」
「糖尿になるぞ」
「俺はまだ若いからなりませんー」
「若い時の食生活は後々…」

いつものようにお説教が続くかなぁと思っていると、紅麗が何か思いついたように言葉を止めた。

「なに?」
「半分にすればいい」
「え?」

紅麗の箸が、俺の玉子焼き(元々切ってないから)半分持って行って。
自分の目玉焼きを半分にした。
半熟の黄身がテーブルに落ちないように急いで紅麗が俺の皿にのせる。
とろり、と黄身が俺の皿に広がった。

「いーの?それ、甘いよ」
「ああ、甘いな」

そう言いながら、紅麗は玉子焼きも目玉焼きも完食した。

次からは全部半分子にしようと決めた。













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烈火は「男の料理」派です。
拍手で使用していました。
07/10/25

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