兄のプライド
紅麗が休日に、自室で仕事をしていると携帯が鳴った。
表示された名前は「烈火」。
デスクの横にあるベッドを見ると、そこには携帯を掛けてきたはずの弟が寝ている。
どこかに落として来たのか?と思い、出ると。
『もしもし、紅麗?』
紅麗にとってもう一人の弟のような存在の、小金井薫の声がした。
小金井は今、烈火の家に居候している。
「どうした?」
『烈火兄ちゃんがさぁ、携帯忘れてたから』
「そうか」
『そこにいる?届けようか?』
「ちょっと待て」
紅麗は席を立ってベッドに寝ている烈火に声を掛ける。
すると烈火が目を擦りながら起きた。
「お前、携帯を家に忘れただろう」
「えーそうだっけ」
「薫が届けるかと言っているが、どうする」
自分の携帯を烈火に掲げながらそういうと、烈火が手を伸ばしてきたのでそのまま渡す。
「小金井?」
「うん、なんかメールとか入ってる?」
「じゃいいや。なんかあったら紅麗の携帯に連絡してくれればいいし。ん、じゃな」
携帯を切ると、烈火は欠伸をしながら携帯を返してくる。
そしてもう一眠りしようとするので、いいのか?と声をかけた。
今時の若者でなくても、携帯が側にないことを不安に思わないのかと思ったのだ。
「なにが?」
「携帯だ」
「いーよ、なんかあったら紅麗んとこかけてって言ったし」
それだけ言うと、烈火は今度こそ眠りに入った。
何か釈然としないものを感じながら、紅麗は残りの仕事を片付けようとデスクに戻りパソコンを弄り始めることにした。
仕事に一端の区切りがついたので、保存をしてパソコンを切る。
横目で紅麗のベッドで我が物顔をして眠っている人間を見ると、寝返りを打った所だった。
釈然としないものの正体。
それは、多分くだらないものだと紅麗は分かっている。
「烈火、起きろ」
「ん〜」
「昼食、食べに行くんだろ?」
「んー」
兄弟なのだ、自分たちは。
例え半分だけでも、紛れもない兄弟。
それなのに、烈火は「兄」と呼ばない。
「烈火」
「ん、起きる…」
理由は簡単だ。
兄弟として育っていない。
ただ、それだけ。
頻繁に紅麗の自宅を訪れてくるのは、恋人だからで。
こうやって懐いてくれるのも、無防備な姿を見せるのも恋人だからで。
それに対して不満はまったくない。
が。
兄としては、もう少し弟らしい態度になってほしいとも思う。
もっとも、弟らしい態度と言ってもそれがどんな姿か紅麗にもわからないのだが。
自分でも分からないのだから、求めても仕方がない。
そう、紅麗は起き出す烈火を見ながら溜め息を吐くしかなかった。
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紅麗が気になっているのは、烈火と小金井の方が兄弟らしいということ
です。
小金井の義兄弟は紅麗だし、烈火の兄は自分なのにーという。
…文章力なくてごめんなさい。
07/07/24(拍手で使用していました)
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