どっちの方が大事なの?





「なぁ、何がしたかったんだ?」

仕事場のソファで、ごろごろしながら烈火が言う。
書類を全て片付け、一服しようと音遠が運んできたコーヒーに口を付けながら紅麗はなんのことだと考えた。
しかし、思いつかない。

「なんのことだ」
「……忘れんなよ。小金井に変なことさせたろー」
「変なこと?」
「俺におまえの呼び方云々で」
「ああ。あれか」

先日、小金井が烈火に「どうして紅麗のことを兄と呼ばないのか」という質問をしてきた。
烈火は小金井にまさか兄弟でデキているなんて言えないので、適当に誤魔化したが。
どう考えても紅麗の仕業に違いない。
だって小金井はそんなこと気にしないからだ。

「なんとなく、だ」
「何ソレ」
「いや。小金井はお前のことを兄ちゃん、と呼ぶだろう」
「おう」
「お前達の方がよっぽど兄弟らしいな、と思った」
「そうか?」
「薫は私のことも呼び捨てだ」
「それはー…部下だったからだろ?」
「ああ。だから、なんとなく、だ」
「よく、わかんねぇ、んだけど…つまりさ」

烈火は起きあがってから少し黙って、下を向いて眉を顰めた。
それから怒ったような顔をして紅麗を見る。

「俺、が嫉妬されてねぇか?俺より小金井に兄ちゃんって呼ばれたいんだろ?」
「そうか?」
「そうだろー小金井が俺を兄ちゃんって呼ぶのが嫌なんだろ」
「そうでもないが」
「でも、紅麗が呼ばれないのが嫌なんだろ」
「嫌というか…」
「なんだよー」
「なんだろうな」
「ムカツクー」

ぷい、と烈火が拗ねて再びソファに横になった。
紅麗が視界に入らないように首を横に向ける。
紅麗はそれに少し考えてから近付いた。
烈火の腕を取ると起きあがらせ、自分もソファに座ってその上に烈火を乗せる。

「んだよ」
「単に、お前達が仲が良くて羨ましいだけだ」

そう言って淋しそうに紅麗が笑い、烈火は目を見開いた。
そして、紅麗を抱きしめる。

「バッカだなぁ。俺も小金井も、紅麗が大好きなのに」








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単に疎外感を感じていた兄様でした。
07/09/28

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