頑張ったね
紅麗が仕事先から帰ると、烈火が社長室(紅麗の部屋)で寛ぎながらケーキを食べていた。
そこで烈火が紅麗の仕事が終わるのを待つことはよくあるし、またモノを食べているもの頻繁にあることだ。
けれど、烈火は紅麗の姿を認めた瞬間、いつもより嬉しそうに笑うので紅麗は不思議に思った。
「どうした?」
不思議に思ったまま声を掛けると、烈火は何やら薄い冊子を渡される。
紅麗が所有したことのないその紙には「成績表」と大きな字で銘打ってある。
「このあいだのか」
「おう。雷覇にカテキョしてもらって成績上がったから、さっき礼に母さんが作ったケーキ渡しに来て。あ、紅麗のもあるぞ」
どうやら烈火が食べているのは雷覇や音遠が出した来客用のケーキではないようだった。
シンプルなショートケーキには苺がのっていて、率先して甘いモノを食べる方ではない紅麗にも魅力的に見える。
「ああ、頂こうか」
そう紅麗が言うと、烈火は冷蔵庫に入れてるから取ってくる、と言って出ていった。
紅麗はそれを見送り、先程まで烈火が座っていた場所の隣に座って成績表を見る。
雷覇が家庭教師をする前までは補修だったり居残りだったり、赤点だったりさんざんだったのだけれど、最近はそれなりに普通の成績になっている。
花火師になるのだから勉強なんてしなくていい、と言った烈火に紅麗は、それでも普通に勉強すべきだと諭したのは、烈火に自分の会社に入って貰いたいという思いが紅麗にあったからだ。
けれど、それはきっと叶わないだろうと紅麗も分かっている。
時間縛られることは烈火に似つかわしくないし、そもそも育ての親の跡を継ぐことが烈火にとっても進むべき道だ。
烈火は直ぐに皿に乗ったケーキとコーヒーを盆に乗せ戻ってきた。
そして嬉しそうに紅麗の隣に座った。
「頑張ったな」
「だろ?」
得意げな烈火の髪の毛を梳くように撫でてやれば、まるで喉からごろごろと音が鳴りそうな程寛いだ表情を魅され、紅麗は一瞬どきりとする。
それを誤魔化すように、ショートケーキの上に乗った苺を手に取り烈火の唇に押し当てた。
「ん?」
遠慮なく苺にかぶりつきながら、烈火はなんで?と言うように紅麗を見上げるので、紅麗はご褒美だと呟いた。
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烈火に見取れてしまった紅麗兄様。
拍手で使用していました。
08/03/23
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