におい








風が吹く。
藍染の隊長室で眠っていた恋次が、目を覚ました。

「ああ、おはよう」
「おはよう、ございます」

寝間着が少しずれていたのを直しつつ、恋次が身体を起こす。
元々寝起きは悪くなかったが、藍染の自室の環境がいい為か恋次はすんなりと目が覚めたようだ。

「春、になりますね」
「わかるのかい?」
「においがします」

それでもまだ少し眠いのか、普段よりゆっくりした喋りだ。
恋次が感じる春のにおい。
それはどんなものだろう、と藍染が問う。

「緑とか、地面とか、花とか、生き物とかのにおいです」
「へえ」
「冬は寒いから何にもにおわないんです」
「じゃあ、夏は?」
「暑くてそれどころじゃないけど…地面が熱で焼かれるにおいがします」
「ああ、それはわかるかも。秋は?」
「枯れはじめた草のにおいがします」

恋次が見た目に反して繊細なのは、藍染も知っていた。
だからこそ惹かれた。
けれど、こんなにも季節に敏感だということは知らなかった。
それはもしかしたら、流魂街で生きていく為の知恵かもしれないけれど。

「春は、いいにおいです。果物もできるし、おいしいものが沢山」
「そう」

急に色気より食い気、になってしまった恋次に藍染は苦笑する。
けれども、それが恋次だとも思う。

「じゃあ、桜が咲いたらお花見をしよう。桜餅や果物や、酒も持って」
「いいですね」
「この直ぐ近くに大きな桜の木があるから、二人で」
「はい。楽しみです」
「花見の予定も決まったことだし、朝餉を頂こう。まだ寒いから早く着替えた方が良い」
「あ、はい」

藍染の言葉に、慌てて恋次が布団から這い出た。
急いで死覇装を着込み、朝餉が用意されるであろう居間へと向かう。
髪もまだくくらない恋次の後ろ姿を見ながら、藍染は一呼吸した。





春のにおいと共に、恋次のにおいがした。
























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案外爽やかになってしまいました。
「におい」ってエロになるかなぁと思ったら、「翌日」という描写も出せずじまいです…。

えっちの次の日です。
恋次が大好きです。
赤い髪がエロイと思うので、そういうもの書きたいなぁ…。

2007/05/24
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