沁みる秋雨












「飛影、やまないな、雨」
「…触ると溶けるぞ」
「え、マジで」
「ここらの雨はな」

出先で雨に降られた。
いつものように、単に気晴らしで出かけただけだから早く帰らなきゃなんだけど。
雨が降ってきて。
それは体が溶けちゃうような雨で。

「酸性雨?」
「なんだそれは」
「人間界の雨だよ。当たると銅像とか溶けちゃうんだぜ」
「物騒だな」
「魔界程じゃねぇってばよ」

ヒヒ、と笑うと飛影が呆れたように溜め息を吐いた。
飛影の判断で雨が降り出した途端逃げ込んだ洞窟は暗い。
文句を言うと飛影が炎を創り出して、転がっていた木の枝に灯した。

暗く狭い、その世界。
こんな世界じゃ俺は暮らせない。
けれど、広い世界は淋しい。

偶には暗く狭い所に逃げ出したい。
そう思って飛影に笑うと、ふん、とあしらわれた。

苦笑して外を見ると、雨は小雨に。

「もうそろそろ、帰らなきゃ」
「…もう少し。まだ止んでない」
「そうだな。もう少し」

もう少しだけ、ここで現実逃避。
















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結局デートです。
っていうか秋があんまり関係ないですね。

07/10/21

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