眠るヴィーナス
帰宅すると、縁側で昼寝をしている弟が目に入る。
季節は秋の初めで、まだ涼しさと暑さが入り交じる。
木々が少しずつ秋色になり始めているのを見て、正守は目を細めた。
「ただいま」
帰省の連絡は入れていたのだが、正確な時間を言っていなかった為か祖父の父もいないようだった。
少し考えて、キッチンへ向かう。
案の定、冷蔵庫には良守が作ったであろうケーキがいくつか。
その中から一つ取り出し、適当に飲み物を持って縁側へ向かう。
弟を起こすつもりはなく、ただ横に座り庭を眺めた。
良守が反抗期に入るまでは、こうやって一緒に縁側で昼寝をしたり、庭で遊んだりした。
秋には鳴く鈴虫を探したり、落ちてくる紅葉を集めてみたり、もう少し季節が下ると芋を焼いた。
あの頃の思い出は今でも正守の支えだ。
感傷に浸る暇など今はないし、今日帰ってきたのだって調べ物があるからだが、それでも呑気に昼寝をする弟を見れば感化されたくなる。
環境が変わらなければ、人も変わらない。
実家で育ては変化は最小限で済む。
四百年間変わらず家業を続けているこの家ならば、良守は何一つ変わらないのだ。
良守は変わらないからこそ、強い。
それを羨ましく、そして嬉しく思いながら正守は弟の寝顔を見る。
まだ子どもだからか丸い頬をつつくと、昔よりは硬くなったかなと考える。
暫くつついて、過去の感触と比べていると良守が唸った。
「起きた?」
「んー…」
うっすらと瞼を開けた良守は暫くぼんやりと指を見つめる。
目が覚めていないのだろかと正守が思っていると、良守はその指をぱくりと銜えた。
それには正守も驚いたが、良守のするがままに任せていると、どうやら口寂しかっただけらしくそのまま目を閉じる。
どうしようかと思い、視線を周りに巡らすとケーキが目に入る。
正守は徐に指を抜き、その生クリームを指に絡め取って良守の口元へ運んだ。
指を抜かれたことが不満だったらしい良守は目を開け、再びその指を銜える。
しかし今度は生クリームがあったせいか、良守は眉を顰めた。
けれど甘いもの好きの本能か、一通りその生クリームを舐め取り、おまけに足りなかったのだろう、ちゅ、と音を立てながら二、三度軽く指を吸うと、ぼんやりとしていた瞳は段々力強さを取り戻す。
「…ぅう?」
「目、さめた?」
指をくわえさせたまま、正守が優しく問いかけると良守が正守を見る。
一瞬の間があった後、良守は勢いよく起きあがった。
「な、なっおまっ…く、くちに、指っ」
「ん?指?指がなに?」
弟の唾液がついた指を正守は舐め上げながら、問う。
良守はそれに顔を赤くして、後ずさった。
「な、舐めたっ」
「俺の指を先に舐めたのは良守だよ」
「お、おまえが勝手にっ…」
「違うよ。まぁ、おもしろくて生クリーム舐めさせたのは俺だけど。最初に銜えたのはお前」
「う、うそだ」
「ホント。兄さんは嘘つかないよ?」
赤くなり、後退し続ける良守に正守はにじり寄る。
それは良守の背が奥の襖に当たった所で終わった。
にやにやとした楽しそうな笑いに良守は冷や汗をかかずにはいられない。
「俺の指、そんなにおいしかった?」
「ん、んなわけねーだろっ」
「ふーん、じゃあ子どもの頃の夢でも見てたの?」
「覚えてねぇっ」
「ふーん…じゃあ、さ」
追い詰めた良守に覆い被さり、正守は腰に手を回す。
逃げられないようにしてからそっと指を良守の口にあてた。
「もっかい銜えたら思い出すんじゃない?」
「う、ぇ…」
強引に口内へ指を入れると、正守は噛まれると思っていないのか強引に掻き回す。
口蓋を撫でられると、思わず声が漏れた。
「ふっぅ、」
「ほら、ちゃんと舐めないと」
「うーっひゃめひょっ」
「…何言ってるの?」
聞き返したクセに、正守は指を抜くどころか増やしてしまう。
本数が増えたことで、良守の唇から唾液が零れていき、それを正守が舐め取った。
同時に正守は二本の指で良守の下を絡め取り、ぐにぐにと押したりひっぱたりする。
良守は苦しいのか呻きとも喘ぎとも取れる声を漏らしていた。
「さっきみたいに吸ってみてよ。物足りないでしょ?」
少し躊躇った後、良守は言われたとおりに指を吸ってみた。ちゅ、と思ったより大きな音が出てしまい、びくりと身体が揺れたのを正守は楽しそうに見る。
正守がそろりと指を抜くと銀色に光る唾液が糸を張り、それが自然に切れるまで良守は目が離せなかった。
「思い出した?」
良守は問いに首を横に振ることで答え、縋るように正守を見つめる。
夢は心地の良いものだったのは確かなのだけれど、それよりも起きたときの衝撃が強すぎて本当に思い出せない。
そんな良守に、正守は容赦しなかった。手首まで垂れてきた唾液を舐め取りながら、考える素振りをする。
「んー。じゃあ、まぁ。責任取ってもらおうかな」
「せきにん?」
「そう。おまえがおいしそうに俺の指を吸うからさぁ。俺の方は思い出しちゃったんだよね」
「なにを?」
「……なんだと、思う?」
そう言いながら、正守は良守に腰を押し付けた。少し硬くなってたそれに、良守が更に顔を赤くし、手を突っ張って正守から離れようとする。
しかし、体格差もありそれは叶わない。
「や、うそっ」
「嘘つかないって言ったじゃん。それにお前の所為だし」
「お、おれのせいじゃねーっ」
喚く良守を余所に、正守が良守の服をはだけていく。
首筋や鎖骨に唇を落とし、後に残らない程度に吸い付くと良守の抵抗は小さくなった。
イケるな、と正守が確信した瞬間。
がら、と玄関が開く音がした。
「正兄っ?帰ってるの〜?」
玄関にあったわらじで正守が帰宅したことに気付いたのか、利守が正守を呼ぶ。
その声に、とろりとし始めていた良守の瞳が大きく開かれた。
我に返った弟に、正守は溜め息を吐く。
「あーあ…。まぁ、昼だし仕方ないね。じゃあ、夜まで待つよ」
「よ、夜っ?」
「うん、夜ね。利守〜縁側にいるから、おやつ持っておいで。一緒に食べよう」
大きめな声で正守が利守を呼ぶと、利守の返事と共に軽快な足音が遠ざかる。キッチンに向かっているのだろう。
良守はしばし呆然としたが、はっとしたように立ち上がる。
「どこ行くの」
「…へ、部屋で寝るっ今度は邪魔すんなよっ」
「さっきも別に俺が邪魔したんじゃないけどなぁ」
「うるさい!」
利守が来ないウチに、と急いで自室に戻る良守を見ながら、正守は実家にも偶には帰ってみるもんだなぁと軽く笑った。
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この程度って…やらしくないですよね。
注意書き必要ないですよねっ(汗)。
絶賛黒兄貴にチャレンジ週間実施中(嘘)。
なんとなく兄貴に自分のことを「兄ちゃん」ではなく「兄さん」としたくて。
違和感バリバリ……おかしいな、コミックでは「兄さん」って自分のこと言っていたのに…(←悶えた)
よっちは兄貴限定の愛と豊穣の神です。意味不明です。
2007/10/6
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