母ちゃんが、妊娠した。 生む 「おめでとう」 「ありがとー」 紅麗に報告したら、あまり表情を変えずに祝ってくれた。 どうでもいいわけじゃないんだよ。 ただ、そこまで関心がないだけだと思う。 「男か?女か?」 「わかんねぇ」 「調べないのか?」 「生まれるまで楽しみにしておくんだって」 「そうか」 「うん」 「そうか」 ふと、会話がとぎれた。 それは珍しいことではなくて。 俺が話さなければ、紅麗が話さないってわけでもなくて。 ただ、俺はちょっと考えて。 紅麗はそれを見ている、というカタチ。 「あのさ」 また、そこで会話はとぎれて。 「大丈夫だ、何も変わりはしない」 紅麗が、そう言った。 俺は何も言わないのに。 変わらないはずがない、と思った。 俺が生まれて、オヤジと麗奈さんと紅麗の状況は変わった。 全て俺が奪った。 それと同じコトが起こるかも知れないと思っていた。 「変わりはしない」 紅麗はもう一度言った。 「そう、かな」 「そうだ、何も変わりはしない。ただ、一人増えるだけだ」 「俺、いてもいいのかな」 「当り前だろう」 「俺だけ、違うのに」 「お前を育てた男と、生んだ女はその程度だと思うのか?」 「……だって、気持ちは変わるから」 「変わったらここに来ればいい」 「え?」 「もし、家に居辛くなったら私といればいい」 「うん」 結果どうなろうと、早く生まれてくればいいな。 そう、思った。 ---------------------------------- ……えと。 生む→生まれる→弟とか妹…。 という脳内経過でございます。

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