共犯、共謀
暗く、埃臭い部屋。
体育館の用具室である。
次の時間に体育がない限り、昼休みにそこに訪れるモノはいない。
普通なら。
だけど、普通じゃないから。
流川と花道はそこにいた。
と、言うか。
花道は流川に連れてこられた。
「ばっかっここ、学校だって!」
「誰もこねーし、扉分厚いから外に声漏れねぇ」
用具室の奥の奥、跳び箱などの影になった壁際。
ヒソヒソ、だけど怒鳴り声で花道が怒る。
それに対し、流川は冷静に受け答えしながら手で花道の身体をまさぐっていた。
シャツを持ち上げ、そこに見える小さなピンク色をつんつん、と触る。
少し起ち上がったそれを、今度は抓ると。
花道から、軽い吐息が漏れた。
花道も、お年頃だから。
触られれば反応する、しかない。
本当はそれが嫌じゃないから、流川相手になら。
花道はぎゅっと手を流川の首に回して、抱きついた。
けれど、その途端。
ぎぃっと思い音を立てて、用具室の扉が開く。
二人は反射的に、身体が強ばり。
一瞬後、流川が花道を庇うように抱きしめた。
自分たちは奥にいるから見えないはず。
こちらも、見えないのだから。
そう自分を落ち着かせ、花道は息を殺して誰が入ってきたかを探ろうとする。
手がかりは、聴覚だけだ。
足音は二人分。
直ぐに扉は閉められた。
ご丁寧に表側から取ってきたのか、鍵までかけている。
「よーし、ここなら誰も来ないぜ」
「……」
その、声は聞き覚えがあった。
花道は本当に小さい声で流川に問うた。
(み、ミッチー…?)
(みてーだな)
(もう一人誰だろ)
(わかんねー。見えねーから)
少しだけ流川は花道から離れた。
慎重に、物音を立てないようにゆっくりと。
用具の隙間から入口付近を覗くと。
三井が見えた。
さっきの声はやはり三井だったのだ。
ならば、もう一人は誰だろう。
何故三井とその誰かはここにいるのだろう。
…恐らく。
目的は自分たちと同じ。
さっきの台詞も、鍵を掛けたこともそれを裏付けている。
流川はそれなら見つかってもいいかもしれないと思った。
但し、その相手次第だが。
と、流川はシャツが引っ張られていることに気付く。
花道だ。
(る、るかわ…)
花道ももう一人が気になるのだろう。
どうにか物音を立てず、こちらにこようとしていた。
流川は周りを見渡し、少しだけ開いているスペースにあった箱をそっと退け、花道をそこに座らせる。
二人で揃って相手を探ろうとする。
しかし、見えるのは三井だけで。
しかももう一人は何も喋らない。
「何、怒ってるんだよ」
三井が問いかけても。
三井は少し後ろにあったマットを広げてそこに座る。
「俺だって怒ってるんだからなー。二週間もほったらかしにしやがって」
なんだか、いつもの三井とは様子が違うことに二人は気付く。
相手に甘えているような素振りだ。
普段はあんなにかっこつけしーなのに。
「受験生なんだ。そうそうできるか」
溜め息と共に、その声は唐突に響いた。
その声に、流川と花道は顔を見合わせた。
だって、この声は。
「ンだよ赤木。だから昼休みにしてやってんだろ」
そう、赤木剛憲。
彼らの元主将だ。
先輩の相手がキャプテン…と、流川は背中に冷や汗が流れた。
想像に、堪えないと。
しかし、実際の所一部を除いては自分もそう思われるだろうコトを彼は思いもしなかった。
とことん、彼は花道しか見えないのだから。
(なーなんでゴリとミッチーが一緒にいるんだろ)
仲良かったっけ、そんなに。
と、この場に及んで花道はそんなことを口にした。
(…どあほ)
(なに〜!)
(しっ黙れ)
(〜〜〜う〜)
彼らが目を離している隙に赤木は三井の元へと歩み寄る。
「次の時間テストがあるんだが」
「どーせ勉強してるんだろ」
「…している」
「ならいーじゃねーか」
聞こえてきた会話にはっと、二人は再び隙間から覗いた。
三井は赤木の手を取って自分の方へと引っ張る。
赤木も抵抗せずに、三井の意志の侭彼の上へと被さった。
(なっミッチーとゴリってそーなんか!?)
(今までの会話聞いてりゃわかるだろ)
(ふぬ〜〜ホモだ!)
(俺たちもだ)
(ふ、ふぬ〜〜〜)
流川はそっと花道を抱き寄せた。
(るかわ?)
(もうちょっとこっち来い、よく見える)
流川の言うままに、花道は身体を流川に寄せた。
いつの間にか流川は、更にスペースを広げて見やすい場所を探していたようだ。
そうして再び三井達を覗くと。
既に三井のシャツははだけられ、胸の当たりに赤木の大きな掌が漂っていた。
「ん〜お前の手、あったけー」
赤木の首に三井が手を回し、ニィッと笑うと赤木にキスをした。
最初は触れるだけだったそれが、音を立てて深くなる。
どちらかというと積極的なのは三井のようだが。
感じているのも三井のようだ。
頬を赤くし、必死にキスをしている。
赤木の手が三井のベルトを外し、そっと股間を撫でると三井が思わず唇を外した。
「あ、かぎぃ」
瞳が潤んだ三井は、甘い声で啼いた。
それに欲情したのか、赤木が一気に三井のズボンを脱がす。
そして起ち上がりかけていた三井自身に手を掛けるとねっとりと揉みしだく。
直ぐにくちゅくちゅと水音が鳴り始め、それに合わせるように三井の喘ぎ声が大きくなった。
それを影で見ている花道は。
次第に自分も興奮してくるのが分かる。
流川以外とセックスをしたことのない花道は、自分以外の人間が喘いでいるところを見たことがなかった。
それも、身近な存在が普段とは違う淫らな痴態をさらけだしているということは異常事態だ。
中心に熱が集まり始めて、どうしようと内心焦った。
流川には悟られないように、と必死で抑えようとする。
が、気付かないわけがなかった。
流川は正直なところ。
目の前で行われていることはどうでもよくて。
密接している花道の匂いに興奮してしまい。
さっきの続きをしたい、とまで考えていたのだから。
だから、もじもじしている花道に内心ニヤリと笑い。
そっと耳元に囁いた。
(桜木も…してー?)
囁かれた声は、意図的に低くいやらしく発せられ。
ドクンと花道の下腹部が疼く。
しかし、花道は理性を総動員させてぶんぶんと首を振った。
(バレんだろっ)
もし、いまされてしまったら。
花道も目の前で喘いでいる三井と同じように、大声で啼いてしまうことが分かり切っている。
そしたら、覗いていたことも自分たちのこともばれてしまう。
(いーじゃん。四人でする?)
花道の思いとは裏腹に、流川は花道の身体を触り出す。
太ももをやらしくなで上げれば。
花道の身体が大きく揺れる。
幸い、声は我慢できたがこれ以上されるとそれも無理だ。
(や、やだっ流川っ)
(我慢するな)
必死に我慢しているのに、流川が囁く甘い誘惑。
このまま流されてしまえば楽だけど。
だけど、ダメだ。
これ以上は、絶対ダメだ。
(こ、声出るっ)
声が出てはいけない、とそればかりで頭がいっぱいになってしまった花道は。
流川の手が熱の中心に来てしまったとき、思わず。
本当に思わず。
流川を突き飛ばしてしまった。
がっしゃん、と流川の身体は用具と共に大きな音を立てて転んだ。
一瞬にして、用具室の空気が固まる。
気まずい雰囲気の中、四人はマットの上へ正座していた。
何をどう言い訳していいのか、誰もが沈黙の中考え込んでいた。
一人例外を除いては。
冷や汗をダラダラ流しながら三井は脱いでいた服を着直し。
花道は顔を真っ赤にしながら乱れていた衣服を直し。
赤木はとんでもない失態を見られたと、激しく落ち込んでいた。
そして流川は、中断された行為をどこで再会しようかと考えていた。
それ故か、最初に沈黙を破ったのは流川だった。
「屋上行くか」
その言葉は花道へ向けられ、そして向けられた花道は意味が分からなくて流川を見遣る。
「ここ、先輩達が使うから」
身も蓋もない、流川の言葉に他の三人はタコのように真っ赤になった。
そんなことにはかまいもせず、流川が花道の手を取って起ち上がる。
「ちょ、ちょ、待てって!」
「そ、そうだぞ流川っ」
慌てて止めに入る先輩達を一瞥して、流川は更に。
「言いふらしたりしないッスよ。俺ら共犯ですから。先輩達もよろしくッス」
どうしてこの男は平然としていられるのか。
誰もが絶句している間にも、流川は扉に向かった。
しかし扉は鍵が掛かっており。
「先輩、鍵下さい」
と、またもや平然と言葉を投げかけたのである。
赤木はもはや鍵を渡すこと以外出来なかった。
後日、花道と三井はこっそり話し合った。
二度と鉢合わせしないように、逢瀬する場所を振り分けたのだ。
何故こんなコトをしなければならないのだろうと、内心涙しながら。
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中途半端ですみませぬ。
終わりが相変わらずダメダメですね。ごめんなさいm(_ _)m
個人的にみっちーは受けなのですが、相手がよくわからないので赤木キャプでしてみました。
が、とある流花の同人誌で木暮×ミッチーを発見し、そっちで書けばよかったーと反省してます。
次はグレさん×みっちーで行きます(次があるんか)
あはは。
遠夜は流花大好きです。
あんま自分では書けませんが。
ラブラブな流花が大好きです。はい。
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