抱き合う 朝っぱらから俺は紅麗の会社を訪ねた。 もちろん、紅麗の部屋。 つまり、社長室に。 音遠はいい顔をしなかったけれど、雷覇が俺を呼んだんだから。 紅麗が煮詰まってるから来てくれ、と。 暫くはソファでごろごろしてたんだけど。 紅麗が急に俺を呼んだ。 「烈火」 「ん〜?」 「学校は?」 「今日は創立記念日で休み」 ホントは嘘だけど。 「烈火」 「ん〜?」 「こっちに来い」 立ち上がって俺は紅麗の机の前に行く。 「そこじゃない」 紅麗が自分の膝を軽く叩く。 こっちに来い、じゃなくて。 ここに、来い。 つまり、膝の上に座れということ。 俺は仕方ない風を装って、紅麗のそこに座った。 もちろん、向かい合わせで。 すると、紅麗の頭が俺の胸の辺りに押し付けられ。 紅麗は俺をぎゅっと抱きしめて、匂いをかぐみたいに、大きく息を吸った。 「お疲れ?」 「多少な」 紅麗はスキンシップが好きらしく、理由を付けても付けなくても俺を抱きしめたりする。 凄く俺も嬉しいからいいんだけど。 最初は驚いた。 だって、そーゆーの嫌いそうな感じだったし。 「10分このままでいいか?」 「いいぜ」 紅麗は俺の背中に手を回して、より紅麗とくっつくようにする。 こうやって抱き合っていると幸せだ。 きっと紅麗も俺と似たような気分なんだと思う。 「烈火」 「ん?」 「お前は温かいな」 そう言ったやっぱり疲れているようだった。 けれど俺では代わりに仕事も出来ないし、役に立たない。 だから、少しでも。 心が癒されるといいと、思う。 それが俺に出来るのなら、いつまでもこうしているから。 たった十分の抱擁が、どうか紅麗の心を休ませてくれますようにと。 俺は祈りながら紅麗の頭を抱きしめた。 ---------------------------------- み、短い…。 最初は拍手用だったんだけど、お題にピッタリだったのでこっちで。 ぎゅーってするのって一番愛情が伝わると思うのです。 友情でも親子愛でも、もちろん恋愛でも。 嫌いな相手なんかぎゅっと出来ないからね。

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