half brother〜吸血鬼編〜
禍々しいほどに暗闇に包まれた古城。
何故か漂う死臭と血の臭い。
血だらけで床に倒れている、一人の少年。
そして、その返り血を浴びながら少年を見つめている青年。
彼らはついさっきまで死闘を繰り広げていた。
血まみれの少年の名は、烈火という。
彼はヴァンパイアハンターだった。
彼の出血は普通の人間ならとっくに死んでいるだろう量だった。
しかし、彼は虫の息ながらもまだ生きていた。
しっかりと、青年を睨み付けて。
青年の名は、紅麗と言った。
彼は、人ではなかった。
ヴァンパイアと呼ばれる種族で、この古城の主。
と、言っても古城に住んでいるのは彼とコウモリだけだが。
彼は烈火が未だ死なないことに少々興味を覚えた。
いたぶりながら殺そうと思っていたのだが、この出血では普通は死んでいる筈である。
面白いモノが手に入った、彼は思った。
はーっはーっと、烈火が荒い息をする。
彼は炎を操ることが出来た。
右手で何とか炎を出そうとするが、それは身体に負担を更に掛けただけに終わる。
死ぬことはできない。
死んでは、いけない。
そうわかっている筈なのに、烈火は目の前の敵を前に諦めることは出来なかった。
もっと強くなってから来るべきだったのに。
「……」
こつ、と乾いた音が石造りの部屋に響く。
紅麗が烈火に近付き、屈んで烈火の視線に合わせた。
烈火の目には、ハッキリと判るほど憎しみという感情が浮かび。
それを紅麗は無感情に観察する。
「貴様は何者だ」
「………人間だ」
明らかに嘘と判る嘘を、烈火は吐く。
人間だったら、もうとっくに死んでいる。
けれど、自分は人間として生きている。
人間としてヴァンパイアと戦っているのだから。
「…知っているか、ヴァンピールは死ぬとヴァンパイアになるそうだ」
その言葉に烈火の瞳にが見開かれた。
何故、自分がヴァンピールだと判ったのか。
声には出さない問いに、紅麗は笑うことで答えた。
「やはりそうか」
そう、言って。
紅麗は烈火の胸ぐらを掴んで起ち上がらせた。
「ぐっ」
「私もまだヴァンピールが蘇生するところを見たことがない」
先程まで烈火をじわじわと痛めつけていた、細身の剣を紅麗は烈火の胸元へと向ける。
自分をヴァンパイアにするつもりだ、と烈火は判ってはいるがもう動くことが出来ない。
こんなに憎んでいるヴァンパイアに殺され、また自分もヴァンパイアとして蘇生するだろうことが。
溜まらなく悔しい。
思わず握った掌からぼぉっと赤い炎が揺らめく。
「その炎ももっと強力になるだろうな…」
紅麗は悔しそうな烈火の炎を見て、微かに笑った。
それが何を意味するのか考える前に、烈火はずぶっという鈍い音を身体の中から聞いて。
痛みが全身を支配していたのが、少しずつ楽になっていった。
そしてそのまま意識が遠くなる。
「憎むがいい…この私を。そしてヴァンパイアとなる自分を」
なのにその声は何故か、ハッキリと聞こえた。
目が覚めたとき、烈火は最も憎むべきヴァンパイアとなっていた。
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またパラレルです。
異母兄弟吸血鬼編。
実は連載モノですが、このタイトルで思いついたので一応ここで。
今拍手で連載しているのが終わったらしようと思ってます。
ダークじゃありません。
色々設定くらいケド、ラブラブになる予定です。
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