告白
最初に異変を感じたのは二十代後半だった。
霊力が減ったとか、体力や傷の回復力が落ちたとかじゃなくて。
身体のどっかが壊れていくような感覚。
ああ、無理したツケかもしれない。
俺は倒れた。
身体に何か病巣があったわけでもなく。
だけど、身体じゃ常人よりも速いスピードで衰えていたのだ。
最初に来たのは雪村と幽助だった。
雪村は年相応に年を取り、幽助は少し顔が大人びていた程度。
コイツはいつまでも老けない。
コイツが魔族でよかった。
きっと、コイツが人間だったら、俺と同じコトになっていた。
だから、よかった。
最後に来たのは、蔵馬。
こいつはそれなりに老けていた。
もちろん、人間の姿の時だけは、だけど。
最初、俺はコイツが好きではなかった。
隠すのが上手いヤツだから。
偽ることが出来るヤツだから。
「幻海師範の弟子は、キミがなるべきだったね」
残念そうに蔵馬は言う。
「そうすれば、師範のように長生きできたのに」
俺は、別に長生きがしたかった訳じゃない。
ただ、残していく人たちが。
悲しむのが、辛いだけ。
「そうすれば、幽助にだって…」
幽助?
ああ、そうだ。
幽助の為に、生きなければならなかった。
これから先、永久にも等しい時を過ごさなければいけないアイツのために少しでも長く。
「できるだけ、人間であるキミが長生きしてくれないと困るんだよ」
いっつもお前は幽助ばっかりだなぁ。
そうだな、長いこと生きてきた、そしてこれからもずっと生きるお前には。
俺は、過ぎ去る時の一欠片の記憶にしか過ぎないから。
だけどさ、今俺死にそうなんだから。
俺のこと。見てくれよなぁ。
「へへ…おめー…は、す、ぐ、俺んこと、忘れ…んだろ、なぁ」
なんとか振り絞った言葉に、俺は自分で悲しくなった。
そして、アイツの驚いた顔を見たあと目を閉じた。
なんで俺の大事なヤツはみんな。
俺よりずっとずっと長生きなんだろうなぁ。
俺がもし、彼らと同質なら。
こんなに寂しくならなかっただろうに。
だけど、やっぱり俺は人間で死ぬ方がいいかもしれない。
例えお前の記憶に、霞んでしまっても。
「…僕がキミを………忘れられるなんて…できるわけないよ」
何か蔵馬の声が聞こえたけれど、それはもう言葉となって俺に届くことはなかった。
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二つの意味での告白。
桑原の独白という告白。
蔵馬の最後の告白。
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