知る














季節は夏になったらしい。
どうなっているのかわからないが、城の中は一定の温度に保たれていて、肌で季節の変化を感じることはない。
しかし、来た時は冬だった。
寝込んでいる間に外の木々の葉が生い茂るようになり、歩ける頃になると陽射しが随分きつくなってきていた。
その間、俺の元に来ていたのは雷覇と、偶に来る医者のような役割のヴァンパイアだけだった。
軟禁状態のように感じたが、動けないのは自分のせいだ。
そう思って我慢していたから、二、三日前から歩けるようになったのはとても嬉しかった。
しかし、歩けるようになったとは言ってもここから出られない。
テラスにすら、鍵が掛かっていて出られない。
開けられる窓は大きいのが一枚と、小さなのが二枚。
元々じっとしていられる性格じゃない為、溜まったストレスは爆発しそうだった。

寝込んでいる間。
俺が出来たことと言えば、与えられた本を読むか寝るか食べるか雷覇の話を聞くか。
それだけだった。

与えられた本は、街に出た頃に読んだ本とは質も量も違い、ヴァンパイアについて詳しいことを知った。
人間が知っているヴァンパイアの殆どは、雷覇のような死人が生き返ったものだそうだ。
雷覇が言う純粋なヴァンパイアは人間と同じように生きている。
人と違う点では、吸血をすること、寿命が長いこと、死んだ人間をヴァンパイアとして生き返らせたり、生きている人間から吸血することでヴァンパイアにしたりすること。
人間からヴァンパイアになったものは、その純粋なヴァンパイアが死なない限り、またその肉体が修復不可能にならない限り生き続けることが出来る。ただし、心臓は動いていないし生殖活動もできない。
つまり、純粋なヴァンパイアのみが子孫を残せるのだ。
純粋なヴァンパイアの多くは人を嫌い、あまり姿を見せないらしく、そのため人間の文献にも残っていないのだそうだ。
しかし、それでも人間の血液を摂取しなければならない為、純粋なヴァンパイアは雷覇のような自分が生き返らせたヴァンパイアを使って血液を集めているものが多い。
しかし偶に自分から動く純粋なヴァンパイアもいるらしく、その一人が自分の父、桜火だったようだ。他に桜火について教えて貰ったことはないが、純粋なヴァンパイアにしては珍しい活動的な性格をしていたらしい。
逆に紅麗は全てを雷覇達に任せているようで、じゃあ何してるんだろうと思っていたら、偶に窓から見える庭に咲いている植物や放し飼いにされているらしい動物の世話をしている紅麗の姿を見た。
穀潰しか?と思っていると雷覇がその花は高く売れるのですよ、と言った。
どうやら紅麗の咲かせる花を街に売りに行っているヴァンパイアがいるらしい。

この城は、思っていたよりもずっと穏やかな時を過ごしていた。
少なくとも俺がいた、火影の里よりもずっと。

しかしそれも、やっと訪れた平和なのだと雷覇は言っていた。




















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そろそろ紅麗が出てくるはずです。

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07/07/30