揺らぎ











「もーどーしろってんだよっ」

大きな声で叫んだのは俺。
今回はただ力を使い果たして気絶しただけ(と雷覇が言った)ので、目が覚めるのは早かったし前みたいにだるくもなかった。
だから今回はベッドではなく軽食が用意された室内のテーブルで話をすることにし、外に出たらヴァンパイアと言うことで狙われてしまうことも聞いた。

「ヴァンパイアは他の魔物とは一線を画します。他のモノは命を奪うことはできても命を与えることはできません。私たちのように、死人を動かすことができるのはヴァンパイアだけ。その力を狙われてしまうので多くのヴァンパイアは城にこもりがちです。だからあなたが外に出れば狙われるのは当然。この城の周りは紅麗様の配下である魔物が多いので大丈夫でしょうけれど、森の外に出ればまだ完全に力を使いこなせないあなたは確実に襲われます」

その長々とした雷覇の説明のあとに叫んだのだ。
だって、じゃあ俺はどこにも行けないじゃないか。
紅麗の城の中でしか。
生来、俺は気が短い方だ。
それが今までずっと篭もっていられたのは全部紅麗への罪悪感。
俺の母の所為で紅麗の両親がいなくなったのだ。
経緯は知らないが。

「紅麗は何がしたいんだよっ。俺を殺したり、助けたり」
「あなたを一度殺したのはあなたが弟だと知る前です。…あなたがここに来た丁度前日にもハンターが訪れていましてね…大事な花園を無茶苦茶にされて紅麗様は苛立っていらっしゃった」
「……そ、だった、んだ」

それは初耳だった。
確かにハンターは狩る者であり、ヴァンパイアは狩られる者だ。
けれど、ヴァンパイアも動物ではなく人間のように感情があるのだと知った今、無作為に狩られるということがどれだけ不愉快なことか俺にも理解できる。
…だって俺も今は狩られる側、なんだろうと急に理解できたからだ。

「でも、こんなに深い森の中に人間がそんなに来るのか?」
「めったに来ませんよ。だから余計に紅麗様も苛立って。前の方は人間だったので気絶させて一番近い街に放りました。けれど、あなたはヴァンピールだったから」

ということは、もしそのハンターが来ていなければ俺は同じように近くの街に放置されたのか。
でも、そうされても多分俺はまたきっとここに来ただろう。
何度だって自分が死ぬか紅麗(と言っても最初は桜火と思っていたが)を殺せるまで。
力の差を考えれば俺がもっとずっと修行を積んだあとでない限り勝つことはなかったのだろうし、どのみち俺はこうやってヴァンパイアになっていたのかもしれない。
なら、今の状態は俺の行動の結果だ。
けれど。
これから、どうしたらいいのか。
紅麗はどうしたいのか。
それを聞くべきだ。
思い立った俺は、雷覇に視線を向ける。

「紅麗と、話がしたい。あいつは、俺を避けてるんだよな?」

最初からそうすればよかったけれど、できなかったことを俺は口にした。











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やっと烈火が行動。
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08/04/06