ご注意 映画しか見ていないので知識不足の上、適当な設定にしています。 ハリポタ好きの方はご覧にならない方がよろしいかと思われます。 どんなハリーでもいいよっという方はどうぞ下へ…。 lavender ハリーは薄暗い地下でごくん、と意味を飲んだ。 分厚い木の扉の前で透明マントを脱いで軽くたたむ。 これから会う人にこれが「透明マント」だとばれないようにしなけれならないこともまた気が重かった。 コンコン。 木の扉が小さな音を立てた。 小さなそれだったが、静まりかえったこの場では大きな音と鳴り響く。 「入れ」 ぎぃっと鳴って扉が開く。 中から薬品の匂いが漂ってきた。 「あの…」 「いいから入れ」 「はい」 ハリーは困っていた。 時刻は、就寝時間もとっくに過ぎている。 そんな時間に、人に見つからないように来いと言われた。 目の前の、男。 ゼルブス・スネイプに。 ご丁寧に来なければ減点をするとまで。 減点をするのに細かい理由は要らない、授業中の些細なミスを見つければいいのだと。 イヤな男だとハリーは思った。 仮にも教師のクセに。 「なんの用ですか」 「風呂に入れ」 「は?」 「だから、風呂に入れ」 一度で理解できなかったハリーに、スネイプは軽く眉間に皺を寄せた。 しかしハリーはまだ理解できない。 「なんでここで」 もう既に寮の風呂に入っている。 それでないとしてもなんでスネイプなんかの部屋で…。 「っていうか、ここ風呂付きなんですか」 確かにハリーは先生達がどこの風呂に入っているのか知らなかった。 しかし寮監生専用の風呂があるのだから、先生達の専用があってもおかしくはないが。 自室にあるのだろうか。 「そうだ。その奥にある」 スネイプの部屋にはいくつか扉があって。 指さしたところにも、また重々しい扉あった。 その奥にあるあるのは風呂で。 そこに今から自分が行かなければならないのか、とハリーは思った。 何故に? 「早く入れ。明日も授業があるだろう」 判ってんなら呼ぶなよ、とハリーは思ったが。 入らないと帰して貰えそうにないから、素直にはい、とだけ返事をして。 その扉に向かった。 「うわっ…」 扉を開けた途端に、なにか甘い香りがしてハリーは声を上げた。 直ぐに我に返って扉を閉める。 そして改めてバスルームを見渡すと。 あの陰険な教師の香りなどどこもなかった。 てっきり部屋同様薬品臭くて、カビでも生えてるのではないかと思ったのに。 真っ白なバスタブから生えている脚は金色で、どこも錆びていないようだ。 そのバスタブには泡が溢れんばかりに。 そして、ほどよく香る入浴剤。 ハリーは自分の頭がおかしくなったかと思う。 これを用意したのは? スネイプ。 誰の為に? 恐らく自分の為に。 何故? ---わからない。 「罠?」 一体なんの罠になるのだ、これが。 考えても考えてもハリーにはわからなかった。 まだ14歳の子どもに、父親と同じ年の男の考えなんて読めないのか。 そう思うが、それとはまた別な気がした。 考えても判らないんだから、ハリーは溜め息を吐いて入浴の準備をした。 ハリーは昔から、他人より遙かに順応力はあるつもりだ。 考えてどうにもならないのなら、入るしかないではないか。 ハリーは又一つ、溜め息を吐いた。 見た目以上に、思っていたものより遙かに入浴は心地よかった。 扉一枚を隔ててスネイプがいるのは、どうにも居心地が悪かったが。 重厚な扉がそれを和らげてくれた。 それ以上に、こうやって一人でいることが久しぶり過ぎたから。 あの事件、から。 一人になる時間がなかった訳ではないけれど。 叔父の家も、学校もハリーにとって休まる場ではない。 叔父に家より遙かに学校の方が好きなのは確かである。 叔父も叔母もいとこもいない。 ドラコ達に嫌味を言われるが、それは大した苦ではない。 ドラコは誰よりも優位に立ちたいだけだ。 ハリーのことが目の上のたんこぶなだけ、と判っているから。 それに、何よりも友達がいる。 ハリーが初めて持った大事な友人が。 だから楽しいけれど。 あの事件から、心を蔽った陰は消えてくれない。 今だってじくじくと、ハリーを蝕んでいく。 気を抜いてしまえば全てを投げだしたくなるほどに。 それでもハリーは、まだやらなければならないことがある。 負ける訳にはいかなかった。 それをわかっているのか、友人は何も言わない。 時折心配そうな視線を寄こす以外は。 それは有難くもあり、哀しくもあった。 だから、ハリーはより気を張らなければならなくなるのだ。 気が休まるときがないほどに。 そこにきての、スネイプの呼び出し。 意味の分らない指示。 面食らったが、結構いいかもしれない。 扉の向こうにスネイプがいることを除けば。 意識しなければ。 いや。意識したって、別にスネイプはハリーに余計な気を遣う訳ではない。 そう考えて、ハリーははたと思い当たった。 「気を、遣われた?」 綺麗で良い匂いのバスルーム。 適温のお湯。 キメの細かいふわふわとした泡。 これは厚意の固まりでしかない。 何故? それはハリーに気を遣って。 疲れたハリーの為に、一人になれる時間と空間を提供してきた。 そう考えられるのでは。 ハリーはそう考えると出るに出られなくなってしまった。 スネイプがあまりにも遅いハリーの様子を見に来るまで。 ラベンダーの香りと湯にのぼせていた。 ---------------------- 珍しく長くなったので前後に分けました。 next 06/02/05















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