lavender
あまりにも遅い。
そう思ってスネイプがバスルームに声を掛けたがハリーから反応はなかった。
のぼせでもしたか、と思って覗いてみると。
案の定、湯船で真っ赤になって気を失っていた。
何をやっているんだ、と声を掛けたが気付かなかったので。
スネイプは泡を洗い流してやり、タオルでくるんで自分のベッドに寝かせてやった。
「ん…」
小さな呻きを上げて、ハリーが目を開けた。
それに気付いたスネイプがそちらに目をやる。
「……気付いたか」
「あれ…」
スネイプの声に気付いたのか気付いていないのか、ハリーは暫しぼうっとしたままベッドの天蓋を見つめていた。
が、すぐに自分の置かれた状況を把握したのか勢いよく上半身を起す。
きょろきょろするまでもなく、ハリーの目の前にいたスネイプに。
ハリーは驚いて軽く声を上げた。
「す、スネイプ先生…」
「全く、のぼせる前に出てこい」
「すみません…」
「もう、今日はここで眠れ」
「え!?」
「動けんだろう」
そう言われて、ハリーは覚醒して初めて自分の身体を見る。
確かにだるい。
けれど、それ以上に。
バスタオル一枚で、服を着てないことに気付いた。
「あの…」
「いいから今日は眠れ。朝早くに寮にもどれは支障はないだろう」
ハリーの言葉を遮ってスネイプは勝手に決めてしまう。
それにハリーは言葉が返せない。
状況がまだ上手く飲み込めないのだ。
何故、スネイプがここで寝ると言っているのかが。
「ああ、服はそこにある」
と、スネイプはハリーの反応を待たずにベッドサイドのテーブルを指した。
そして、部屋から出て行った。
ハリーは一人残され、のぼせたままのまだ呆けた頭で考える。
なにがどうなっているのか。
あのスネイプは誰かがポリジュースで化けたものではないのか?
でもそうだとしたらなんのために?
でもここはスネイプの部屋だ。
わからない。
わからなすぎる。
そうして考え込んでいるウチに、部屋にさっきと同じ匂いが充満していることに気付いた。
甘い香り。
スネイプの趣味だろうか、それとも自分の為だろうか。
もう、何もかも判らない。
ハリーは考えることを放棄しようと思った。
その甘い香りに身を任せて、意識を手放した。
スネイプは寝室の方を見て溜め息を落とす。
部屋には香を焚いておいたから、ハリーは直ぐにでも眠るはず。
だが、疑問は残るだろう。
現に先程もスネイプを見ながら何がなんだか判らない顔をしていた。
そう、自分がどういう状況なのか。
スネイプも言えないので、理解させることは出来なかった。
スネイプ自身が、理解してないからだ。
あの事件からハリーは眠っている間も偶に魘されるらしい。
彼の親友達からスネイプは聞かされた。
どうにかならないか。
夢を見ない薬はないか。
あるにはあるが、まだ幼い生徒達に任せられるような代物ではなかった。
一歩間違えば二度と目覚めないことになりかねない。
仕方がないので、自室にハリーを呼んで風呂場でその香りをかがせた。
甘い香りの正体である。
ラベンダーから出来たそれは催眠の他にリラックス効果も持ち合わせ、悪夢を見せない。
量を加減しているので、ハリーが寮の部屋に戻る頃に効くはずだった。
しかし、ハリーがのぼせるほどに入浴していた為に、あのまま帰せば校内で眠ってしまう。
仕方がないので、スネイプは自室を提供することになった。
わざわざ香にしてまで。
また、スネイプは溜め息を吐いた。
「今日はソファーで眠るか」
それが問題である訳ではない。
けれどスネイプは、そう呟くことで自分の中の違和感から目をそらす。
そう、なぜこんなことを自分がしたのか。
別に可愛くもない生徒の為にわざわざ、風呂を沸かした。
いや、例え目に掛けている生徒のためにだってそんなことはしない。
頼まれたってするはずがない。
そんな違和感から逃れる為に。
寝室とバスルームから漂う甘い香りに、スネイプも身をゆだねた。
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全く持って最初の狙いとは違ってしまったので駄目駄目…かなぁ。
スネイプ先生気付いてないし…。
ラベンダーが無理矢理?
でも最初と狙いが違うのでしょうがない…です><
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06/02/05
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